現場の裏話コラム|vol.28|JRAブリーズアップセールと千葉セリの成功が示すもの

現場の裏話コラム|vol.28|JRAブリーズアップセールと千葉セリの成功が示すもの

JRAブリーズアップセールが、4月23日に中山競馬場で行われた。上場数は昨年より3頭少ない76頭だったが、今年も全頭売却されて売上総額8億4766万円(税込)で前年比を上回った。最高売却価格こそ2970万円と、意外に無難なところで落ち着いたが、逆に言えば平均価格が格段に上がったことになり、それはつまり、全体の馬の質や、レベルアップを示すものでもあるだろう。第20回となる節目を迎えた同セールだが、「開かれたセール」としてすっかり定着した感がある。
 
それに続く形で船橋競馬場で行われたのが、千葉サラブレッドセール(以下、千葉セリ)だ。千葉県両総馬匹農業協同組合が主催する2歳のトレーニングセールで、今年は9日~10日の2日間の日程で開催された。
 
まず初日に上場各馬の展示のみパドックで行われ、2日目早朝に公開調教、その後にセリがスタートした。2009年から社台ファームによる本格的なバックアップが始まり、年々上場馬の質が向上するに伴って、各馬の価格も上昇傾向になるのだが、それに応えるようにセール出身馬として、3月31日のGI大阪杯を制したベラジオオペラを筆頭に、先日のヴィクトリアマイルで大穴を開けたテンハッピーローズと、立て続けに活躍馬が出る。他にもダートGI級5勝オメガパフュームなどがいて、何頭かの例外はあるものの、価格以上のコスパ感が年々増している印象だ。
 ただ、今年はブリーズアップの最高購買価格が思いのほか低かったため、千葉セリの結果を心配する声もあった。しかし、蓋を開けるとまさに杞憂に終わった。
 
上場された47頭は全馬売却され、売上総額は14億2582万円(税込)。平均価格は3033万円(同)。最高価格馬はスクラッタの22(牝馬・父ナダル)の1億2100万円(同)。2番目はキャンディネバダの22(牡・父レイデオロ)で、ベラジオオペラの馬主である林田祥来氏が9240万円(同)で落札した。
 上場馬の全頭売却は、コロナ禍で完全オンラインビット方式だった21、22年を除き、現地で行われるセリでは史上初のこと。平均価格が3千万円を超えたのも史上初。総売上こそ前年比で1千万円強のマイナスだったが、今年は上場頭数自体が11頭少なかったのだから、やむを得ないところ。大盛況だったことに疑う余地はあるまい。これはブリーズアップで〝買い控え〟に出た多くの馬主達が、近年の出身馬の活躍が目立ち始めた千葉セリの追い風に乗った、ということか。
 とはいえ、最高価格馬が新種牡馬の牝馬、であるのは異様にも思える。結局は社台ファームのブランド力、品質の裏付けがあっての好景気、という見方ができるかもしれない。これは近年の傾向である社台グループの〝一強〟状態を加速させる可能性をも孕む。
 
7月には同グループ最大のイベントであるセレクトセールが開催される。この「世界で最も金が動く」と言われるセリが、どんな活況を見せるのか。楽しみなような怖いような……。今年の千葉セリは、そんな複雑な思いにさせられる結果だった。



美浦トレセン情報部:吉本