現場の裏話コラム|vol.24|競馬界の深い悲しみ:栗東トレセンでの哀悼の日々

現場の裏話コラム|vol.24|競馬界の深い悲しみ:栗東トレセンでの哀悼の日々

今週の栗東トレセンは悲しみが支配した。先々週6日の阪神競馬で落馬、意識不明となっていた藤岡康太騎手が、意識が戻ることなく、10日、35歳という若さで亡くなったのだ。週明けの15日、栗東トレセンで葬儀が行われたが、多くの関係者が集まり、改めて藤岡康太騎手の人となりが偲ばれたものである。葬儀に出席した某マスコミ関係者はその様子をこう語る。
 「笑顔の遺影を見るとこちらも涙をこらえるのに必死でした。弔辞を述べた武豊騎手も号泣といっていいくらいの泣き方をしていたのが印象的です。普段はポーカーフェイスであまり感情を表に出さず、それこそ悲しい時があってもこらえるようなタイプだったのですが…。僕も長い間、この業界に携わっていますが、武豊騎手がこれだけの涙を流したのは初めて見たような気がします。他にも同期の浜中騎手も弔辞を述べていましたが、こちらも言葉にならないくらいの泣き方で、悲しみの深さを表していました」と語る。
 
藤岡康太騎手は天真爛漫でいつも明るく、悪い評判をほとんど聞かないジョッキーだった。「確かに後片づけが下手でだらしない面もあったけど、愛嬌があってみんなから好かれていたな」と話すのは厩舎関係者。「運動神経が抜群で、よく両手を離してスマホを見ながら自転車をこいでいた。騎乗技術も高く、ここ一番での勝負強さもあった。昨年はキャリアハイの63勝をマークし、年齢的にもここからピークを迎えてくるのではないかと思っていただけに…残念でならない」と肩を落とす。
また、普段から付き合いのあったマスコミ関係者は「昨年子供が生まれて、会うと子供の話ばかりしていました。昔、函館競馬場で子供向けのイベントがあった時には、ずっと子供とじゃれあっていました。『結婚はしなくてもいいから、子供はほしい』と話していたほど、大の子供好き。それだけに家庭も今からが一番楽しい時期だったはずでしょう。残された家族も不憫でなりません」と目に涙を浮かべていた。
 
競馬に事故はつきもので、今回の事故も誰が悪いというわけではないのだが、今回の死はトレセン内にもかなりの衝撃を与えたような印象が強い。それも藤岡康太騎手の人柄があったからこそ、だろう。栗東トレセン内にはファン向けの献花、記帳台が設けられ、1000人を超える多くのファンが訪れているという。JRA関係者も「これだけ多くの記帳が集まるのは、彼がファンからもどれだけ好かれていたかの証明。イケメンで性格もよく、ファンサービスも熱心だった。本当に悔やまれる」と語っている。天国でも愛嬌ある笑顔を振りまいていることだろう。合掌。



栗東トレセン情報部:田所