現場の裏話コラム|vol.17|フェブラリーSの波乱:異例のメンバー構成と地方馬の模索
フェブラリーSはこれまで、「JRAのGIの年明け緒戦」として紹介されてきたが、今年から川崎記念の施行時期が変更されたことで、正真正銘の〝今年最初のGI〟ということになった。ところが蓋を開けてみると、GIにふさわしいメンバーとは、到底言えないような組み合わせになった。
昨年のJRA賞ダート部門で票を分けたレモンポップとウシュバテソーロが不参加。ブリーダーズCクラシックで2着した明け4歳馬デルマソトガケも、先輩2騎と同じくサウジCに向かった。南関東ナンバー2のマンダリンヒーローも佐賀記念に出走(10着)。
要するに〝飛車角抜き〟どころか、ある競馬評論家に言わせると、「まるでグリーンチャンネルCの出走メンバーかと思うような」レベルになってしまったのだ。
レースの方もパッとしなかった。ドンフランキーが果敢に逃げて半マイル45秒6。これは良馬場ではかなり速いが、後半の半マイルは50秒1もかかった。なのに積極的に追いかけたペプチドナイルが好位から余力十分に抜け出し、1馬身4/1差の大楽勝。これほど差し有利の流れになりながら、追い込み勢にまったく出番がなかったというのは、勝ち馬はさておくとしても、やはり全体のレベルが低かった可能性を否定できない。
某評論家に揶揄されたグリーンチャンネルCを勝ったオメガギネスが、皮肉なことに1番人気に支持された。ところが、スタート直後の不利も応えたのか、見せ場なく14着に終わる。東京大賞典2着で2番人気のウィルソンテソーロ、同3着で3番人気のドゥラエレーデの2頭は、ハイラップを追い掛ける形で失速して、それぞれ8、12着の惨敗。
一方、こういうメンバー構成だからこそ、メイセイオペラ以来の勝利を期待された地方馬だったが、ミックファイア7着、イグナイター11着、スピーディキック14着と、今年も厳しい結果となった。
しかし、この3頭のレースぶりには別の見方ができる。イグナイターの逃げっぷりは目を引いたし、終いキッチリ伸びたミックファイアのゴール前の末脚も、南関東三冠馬の実力の片鱗を感じさせた。何しろ今年は〝全国的なダート競走の体系見直し〟の元年。それだけに南関東に限らず、それこそ全国の地方競馬の関係者が、どのような挑戦をすればいいか、を模索している最中だ。
あるスポーツ紙のベテラン記者も、「トップクラス不在のJRAのGIで、ミックファイアやイグナイターの走りが物差しになる、と地方の関係者も思っていたはず。彼らにとっての今年のフェブラリーSは、いい意味で事実上の前哨戦だったかもしれない。あの結果に手応えを得たとすれば、JRAの関係者もうかうかしてられないと思うよ」と警鐘を鳴らす。
しかし、ファンにとっては、白熱したレースが見られることは大歓迎。クラシックの蹄音が聞こえてくる季節だが、やはり今年はダート戦線が熱くなる予感がする。次を睨む馬達の動向から目が離せない。
美浦トレセン情報部:吉本