現場の裏話コラム|vol.34|無敗の巨星ヤマニンウルス:圧巻の重賞制覇で未来のダート王者誕生か!
ジャスタウェイ産駒のヤマニンウルス(牡4歳)が、無敗のままプロキオンSを制して重賞ウィナーの仲間入りを果たした。これで5戦5勝としたわけだが、常に衝撃的な勝ちっぷりを続けてきた。
まずデビュー戦から度肝を抜いた。536kの馬体は目立ったものの、放馬したり荒削りなままの状態で後続を大差にちぎってレコード勝ち。休養を挟んだ2戦目は24k増の560kで、楽に2番手から抜け出して6馬身差。再度ひと息入った3戦目は576kで、ほとんど追ったところなく3馬身1/2差、続く4戦目は582kで1馬身1/4差。そして今回が584kで3馬身差だ。雄大な馬格から繰り出される先行力と、勝負どころでの反応の良さ、そして追われてからの末脚の持続力。どれを取っても超一流馬のそれだ。
正直なところ、条件レベルの対戦相手は、恵まれていたことは確か。初めての重賞挑戦となったプロキオンSとて、重賞好走歴がある馬も何頭かいたものの、GI級は不在。冷静に考えれば、試金石をクリアしたばかり、とみるのが妥当な線かもしれない。それでも560kを優に超す馬格。大トビでダイナミックな走法。勝負どころで前を捉える時の加速力。大物感に溢れるとはこのことだ。
デビューから休養を挟みつつ6戦無敗で大阪杯を勝ち、GI馬にまで昇り詰めたレイパパレに、少しだけイメージが被る。ただレイパパレは牝馬で、全レースが芝でスピードを生かし切ったもの。休養期間も比較的短く、調整も難しくはなかったろう。対するヤマニンウルスは、大型馬の宿命とはいえ、不安を抱えながらの調整だけに、休養期間は長くなりがち。そのうえで、昇級毎にレースがタフになるダート戦を、まったく危なげなく差して後続をちぎる圧倒的なレース内容。次元が違う可能性がある。美浦トレセン界隈では、「また栗東組にとんでもないのが出てきたな」とか、「一線級とやってみないとわからんよ」と様々な意見が飛び交っているが、いずれにしても今後のダート界を賑わせる逸材であることは間違いない。
プロキオンSのレース後、武豊が「揉まれた経験がない」ことを口にしていて、そうした点は残された不安材料のひとつにはなるだろう。気性面のことを言えば、行きっぷりが良過ぎるあまり、道中いかに折り合いをつけるか、という問題も生じるかもしれない。とはいえ、こうしたことはキャリアを積むにしたがって解消されてくるモノ。要は、そのキャリアをいかに積むかに尽きるだろう。
体質面に不安を抱えたままで、一線級相手に経験を積むことは、どこかに無理を生じさせるもの。高額賞金を狙った海外挑戦とか、無茶な使い方を避け、しっかり相手関係を考慮しながら、無理なくステップアップしてほしい。そう願わずにいられない。
答えが出るのはまだまだ先のことだが、もうひと回り相手が強くなるだろう次回が、本当の意味での試金石になるはず。馬体重もそうだが、どこまで成長した姿を見せてくれるのか。今から楽しみに待ちたいと思う。
美浦トレセン情報部:吉本