現場の裏話コラム|vol.15|”イクイノックスとジャパンカップの光と影:日本競馬界の展望”

現場の裏話コラム|vol.15|”イクイノックスとジャパンカップの光と影:日本競馬界の展望”

ロンジンワールドベストレースホースランキングが、国際競馬統括機関連盟(IFHA)から1月下旬に発表され、日本調教馬のイクイノックスがレーティング135でランキングトップ、ベストホースに輝いた。
日本調教馬の年間ランキングトップは、2014年のジャスタウェイ以来。また〝135〟の数値はエルコンドルパサーについた〝134〟を超える最高値で、名実ともにイクイノックスが日本最強馬として、世界に認められることになった。
 また、イクイノックスが優勝した2023年のジャパンカップが、「2023年ロンジンワールドベストレース」を受賞。現行のルールでGI競走ランキングが発表されることになった2015年以降、日本のGIレースが1位となるのは史上初。ダブルの快挙となった。
 これを記念して、第1回東京競馬3日目11Rの早春Sを〝ジャパンカップ2023年ロンジンワールドベストレース受賞記念〟と名称変更し、施行されたのはご存知の通り。このレースを勝ったのがキング騎手で、2着にはキングスコート騎手。ともに短期免許で騎乗中のイギリス出身の騎手だった。日本競馬の国際色をアピールした点で、意義深い記念レースになったのではないか。
 
それはさておき、上記の受賞に際してイクイノックスの馬主である米本昌史氏、木村調教師、ルメール騎手と、JRAの吉田理事長がコメントを発表した。中でも印象的だったのが理事長のコメントだ。
 「世界に通用する強い馬づくり」というジャパンカップの創設理念に始まり、「2022年トップ100GI競走」では叶わなかったトップテン入りに、2023年度は4競走が選ばれ、そしてジャパンカップがベストレースの評価を受けた。これについての感謝と、日本競馬のレベルアップに尽力したすべてのホースマンとファンにも感謝の言葉を口にした。
 
翻って日本国内に目を向けると、近年はすっかりジャパンカップの評価が低くなってしまっている。外国から一流馬の参戦が減ったどころか、遠征馬がいない事態まで現出し、それこそ存続の是非まで口にする評論家、記者達もいるほど。まさにバブル期の「ジャパンアズナンバーワン」的な風潮に覆われているかのよう。今回のベストレース選出で、その傾向に拍車がかかるのではないか。
 
理事長コメントはそうしたことへの警鐘、と受け取れなくもない。が、一方でJRAの先人達への忖度も感じられ、どこかに違和感がないだろうか。あるスポーツ紙のベテラン記者などは、「あくまで噂レベルだよ」と前置きしながら、IFHAとJRAの蜜月ぶりを指摘して、今回の受賞が「出来レース」だった可能性すら口にする。そこに何があるのか。
 いずれにしても、ジャパンカップというレースは、主催者の一部にとっては、大きな意味を持っているのかもしれない。それはつまり人事面において、なのか……。レースには直接関係ないし、ことが上層部のことだけに厄介だが、将来の日本競馬の方向性を考える時に、まったく無視もできず、より慎重な視点が必要になりそうだ。

美浦トレセン情報部:吉本