現場の裏話コラム|vol.10|
先週7日に新規調教師の発表があった。
栗東で最も注目されたのは、現役ジョッキーである秋山真一郎騎手の合格だろう。
来年2月末でステッキを置き、セカンドステージへ進むことになる。これまでJRA重賞38勝、GIは2勝。1000勝以上もマークし、一流ジョッキーとしての道を歩んできただけに、ターフを去るのは少々残念でもある。ただ次の舞台でも輝いてほしいものだ。
マスコミに対しても真摯な姿勢で人気が高かった秋山騎手。
関西の重鎮関係者は「今回の試験は一発合格でした。ジョッキーは勉強に慣れていないため、筆記試験を何回も受けている人も多い。そういう意味ではかなり頭がいいのでしょう。ジョッキー時代から受け答えもしっかりしており、マスコミに嫌な顔を見せることが少ないジョッキーでした」と語る。
騎手としての技術も一級品で、「とにかくきれいなフォームで、目標とする武豊騎手のようにフォームがぶれない。
一時期、お尻をつく『トントン乗り』が流行ったこともありましたが、秋山騎手は一貫して動きの少ないきれいなフォームを貫きました。
また、世界的な名手のライアン・ムーア騎手が馬主に『日本人ではどのジョッキーが上手だと思う?』と聞かれた際に、最初に武豊騎手を挙げて、2番目に秋山騎手を挙げたといわれています。それくらいまでに技術は高かったジョッキーですね」とエピソードを披露した。
一方、高い技術があったにも関わらず、GⅠは2勝にとどまったという見方もできるだろう。
これについて前出の重鎮関係者は「性格の問題でしょうね」と分析した。
「確かにマスコミ受けもよく、いつも穏やかな口調でピリピリした部分がないのでマスコミ受けもしていました。ただ勝負に対する意識というか、そういう闘争心が欠けている面もあったかな、と思いますね。フォームにこだわる分、強引な騎乗も少なかった。大レースを勝ちきるのは思い切りなども必要ですから」
とメンタル面を原因に挙げている。
さて、調教師としての資質はどうなのだろうか。
「技術面は確かですからね。それに優しい性格も、トレーナーとしてはむしろプラスでしょう。いつもピリピリしていても、スタッフや馬には全くいい影響がない。社台系にどっぷりつかっているタイプでもないので、温かい雰囲気のチームができるのではないでしょうか。イメージでいうと昆厩舎のように、技術を生かしながら自分でじっくりと育てていく厩舎になっていくのではと思います」
と重鎮関係氏からもお墨付きが出た。
トレーナーとしても羽ばたけることを期待したい。
栗東トレセン情報部:田所