現場の裏話コラム|vol.7|急な引退の裏に金銭トラブル!?

現場の裏話コラム|vol.7|急な引退の裏に金銭トラブル!?

11月11日付けで熊沢重文騎手が引退した。
昭和43年生まれの競馬学校2期生。

平地と障害競走それぞれで200勝を挙げた唯一のジョッキーで、通算勝利数は1051。
平地でオークス、有馬記念、阪神JFのGI3勝を挙げ、障害でも中山大障害J・GIを制した超個性派だ。

関係者からもファンからも親しまれた〝昭和の名騎手〟が、また一人、ムチを置いたことになる。
直接的な引退理由は、6月の落馬事故による負傷の問題だった。復帰の努力を続けていたが、傷めた頚椎の状態が思わしくなく、日常生活にも影響が出る可能性を指摘されてのドクターストップ。現役続行に意欲を見せていたわけだから、本人は不本意だったかもしれないが、それでもたくさんの人に惜しまれつつ、温かい目で見送ってもらえたのは、騎手冥利に尽きたのではないか。見事な幕の引き方だったと思う。

一方、その2週間ほど前のこと。
熊沢とは対照的に、デビュー6年目の、まだ若手と言っていい山田敬士騎手が、ひっそりと引退した。

9月の調教中の負傷で休養を余儀なくされたが、回復が見込めないとのことで、本人から騎手免許の返上申請があった、ことになっている。
母子家庭で育った境遇に加えて、2度の競馬学校不合格を経てのデビュー。
そうした面が苦労人というイメージとなって、関係者だけでなく、一部マスコミも好印象で報道したものだったが、デビュー年にゴールを間違うという重大なミスを犯して、騎乗停止処分を受ける。それでも本人は前向きな姿勢を崩さず、理解のある馬主の援助もあって地道な騎手人生を歩んできたと思っていたのに、今回突然の引退発表である。

これについては、含みをもたせながら、「どうも違和感が拭えない」という関係者が少なくない。

「まず負傷の詳細が報じられていない。それに事故から10日くらいで即引退、というのは不自然でしょう。騎手だけでなく厩舎スタッフにだって、怪我による休業手当は出るわけですから。回復が見込めないほどの重症なら、すぐには働けるとは思えないし、だったら余計に手当ては有り難いはず。いきなり引退、というのは……」

と語る。

確かにそれはそうだ。
理解があって、騎乗馬を用意してくれる馬主がいるのなら、こうした局面で多少のバックアップがあってよさそうなものではないか。

何があったのか。
前述の事情通関係者が語る。

「金銭トラブルですよ」と別の記者は単刀直入に口にする。「この3月に所属していた小桧山厩舎を出てフリーになった。これがキッカケになったんじゃないですか。後ろ盾がないと、馬主だってよほどの思い入れがない限り、プライベートまでは面倒見切れないでしょう。匙を投げられたってこと」

それにしても唐突過ぎないだろうか?。どうも釈然としない部分がある。
華やかだった熊沢引退の陰に、若手騎手が負のイメージを残して去って行った。
この部分の明暗には、もっと大きな問題がはらんでいるように思えてならない。

美浦トレセン情報部:吉本