現場の裏話コラム|vol.3|美浦発:過去のケースと全く異なる天覧競馬の発表。

現場の裏話コラム|vol.3|美浦発:過去のケースと全く異なる天覧競馬の発表。

いよいよ今週末は、秋競馬最大の大一番、と言っていいレベルの好メンバーが揃う天皇賞(秋)だ。

昨年の年度代表馬イクイノックスを筆頭に、ダービーでこれを破ったドウデュースがエントリー。更に春の天皇賞馬ジャスティンパレス、今年に入って急上昇を遂げたプログノーシス、大阪杯でGIタイトルを手にしたジャックドール。未完ながらモレイラが2度目の騎乗となるダノンベルーガと続くのだからたまらない。登録の時点で名前のあったスターズオンアースが、急きょ回避したことが残念だったくらいだ。
 
そして今回の天皇賞(秋)は、まったく別の意味でも大きな話題となり、後世に語り継がれることになった。今上天皇が当日、東京競馬場にご来場されて観戦される、いわゆる〝天覧競馬〟が、令和になって初めて実現することになったからだ。

競馬博物館で開催されている競馬法100周年記念特別展『伝統の天皇賞~日本競馬のあゆみとともに~』と、第168回天皇賞をご覧になるためだが、JRAとしては、これ以上ない力の入るイベントになる。

しかし、だからこそ重鎮の競馬内部関係者に言わせると、これまでの天覧競馬の時とは雰囲気が違うことが気になるという。

「JRAから発表になったタイミングが、通常よりも早かった。それも中途半端な火曜日だったからね」

がその理由。

それを裏付けるかのように、同日すぐに、天皇賞当日のセキュリティに関する追加の発表があったことも「違和感を増幅させた」というのだ。

前述の関係者によると、

「これまでの天覧競馬の場合、直前まで発表されることはなかったんだ。警備の問題があるからね。もちろん競馬会だって、相当レベルのビップの対応はしてきてるけど、やっぱり対象が天皇陛下となると、念には念を入れても、やり過ぎるってことはない。だからギリギリまで公表されなかったんだ。それが今回は当該週の火曜日でしょ。週明けいきなり、みたいなタイミングだったから、水曜日の朝からトレセン内部は結構な騒ぎになったんだ。誰かがどこかの社にリークしたんじゃないか、って話になってね。結局、わからず終いだったけど」

ということらしい。

そりゃあ犯人探しはスムーズにいくわけがない。実際に情報が漏れていたとして、その出どころ次第では誰かのクビが飛ぶことになるだろう。

それもそのはず、宮内庁が「セキュリティの甘いところへ、陛下に足を運んでいただくわけにはいかない」なんて理由でキャンセルされたりした日には、競馬全体のイメージダウンに直結してしまう。

〝警察官立会のもとでの手荷物検査の実施〟がすぐに発表になったのも、JRAとして最悪の事態を避けたいがためではないのか。冗談抜きに深刻だ。

いずれにしろ前回の天覧競馬を勝ったのはデムーロで、今回騎乗予定だったスターズオンアースは回避。これとて意味深長だが、とにかくサイン馬券派ならずとも、レース直前まで何があるのかを隅々まで注目しておいてほしい。

美浦トレセン情報部:吉本