現場の裏話コラム|vol.58|中堅騎手の炎上騒動――“競馬では食えない”発言が波紋を呼ぶ

現場の裏話コラム|vol.58|中堅騎手の炎上騒動――“競馬では食えない”発言が波紋を呼ぶ

 年明け早々、SNSのエックス(旧ツイッター)上で、〝宮崎ほくと〟がトレンド入りした。昨年の関東リーディング79人中69位。デビュー19年目となる35歳で通算181勝。重賞は2勝。成績的には平凡だし、不祥事を起こしたわけでもなく、特に目立ったところのない中堅騎手だ。
 だからこそ名前を耳にするのが久しぶり、という競馬ファンも多かったから、何があったのかを検索し、その内容に衝撃を受ける人が続出したのだろう。そのうえで呆れる人が批判的な書き込みをし始めた。結果として炎上することになった。経緯としては、こんなところのようだ。
 
 ことの発端は昨日今日の話ではない。なかなか結果を出せない宮崎北斗が、騎手として自分なりのプラスアルファを求め、フィジカル、メンタル両面のトレーニング理論や技術を学び、それを騎乗に生かす術を模索。更には、それを他のジョッキーだけでなく、一般人の顧客にも広めてビジネスにしようと考えたことに始まる。
 普通に考えれば、そのこと自体は問題なさそうに思える。ただ一方で、成績を上げたいのなら、脇目も振らず騎手の仕事に専念するべきではないか、という意見も根強い。これは一部のファンだけでなく、関係者の中からも少なからず出てくることだ。
 これに宮崎サイドが反論した。
「もう本音だけ伝えます。今まで世間体を考えて隠し続けて来たけど、正直もう競馬では食ってけない。子供が3人いて月収10万って(笑)。でも、こうなる恐怖は5年前から感じてた。だから今は騎手をしながらも、スタッフが10人いる会社を経営し、家族を養うことが出来ています。中卒で競馬以外何も知らなかったけど、少しづつ社会の事が分かってきた気がします」
 ここまでなら良かったのに、その後JRAの対応に「自分は守られていない」などと文句を垂れ、苦言を呈した馬主はブロック、という愚挙に出た。あげくの果てに「あぶく銭を手にするだけのギャンブルなぞやめろ」などとファンにもケチをつけた。
 
 ご存じの通り、日本の競馬は馬券の売り上げで成立している。3兆を超す売上金があればこそ、競馬サークルの活気を支えることができているのだ。それをまったく理解せず、自分の不遇をすべて他者に擦り付けたは、そりゃ炎上もするだろう。
 美浦のベテラン記者は冷めた目で言う。
「宮崎は若い時分から口の利き方を知らないし、騎乗技術を云々する前に、人としてやるべきことがたくさんあった。今回の炎上も反応があるから楽しくって、調子に乗っているうちに馬鹿なことを書き過ぎた。そういうとこだぞ、と言ってやりたいです」
 昨年来のジョッキー達の不祥事は、要するに幼稚なまま大人になった連中が引き起こした程度の低い犯罪、と言い切れるのかも。このあたりにどう対応するのか。新年早々、厄介な問題が露呈した格好になった。


美浦トレセン情報部:吉本