【有馬記念】認定競走主幹菅原貴史の追い切り寸評
■1枠1番 ダノンデサイル【評価A】
安田厩舎[西] 横山典騎手
[1週前] 横山典騎手
【栗東CW】 良 82秒5-67秒0-52秒1-37秒1-11秒1 馬なり
[今週] 調教師
【栗東CW】 良 83秒2-67秒1-52秒3-37秒6-11秒6 馬なり
内枠からロスなく好位のポケットへ。これは日本ダービーの再現濃厚かと思わせた前走の序盤だが、そこからは悪夢のような展開に…。1周目正面辺りから外より複数の馬が動いた影響で逆に馬群の密集するインコース側は動くに動けない状態へ。気付けば中団、後方、圏外へとどうすることもなく位置を下げていく同馬。ようやくバラけてから脚は使ったものの、時すでに遅しで6着まで。見方によっては運に見放されたかのような結果だった菊花賞だが、果たしてそうなのか。仮にも、取り消し明けと万全とは言い難いデキでも世代の頂点へと立った実力の持ち主。まともであれば、何をするでもなく圏外まで退くとは思えぬ。そもそも、鞍上は日本屈指の艶やかな騎乗スタイルを誇る名手。動かす気になれば、あんなもの幾らでも回避できよう。つまり、あれはああするしかなかったということ。そう、おそらく当時の同馬は無理のできる状態になかったのだ。実際、前走時は呆けた面が目につき、いかにも久々といった鈍さが目立っていたではないか。その点、一叩きで型通りに良化した今回は良い。心身のバランスが整い活気にも溢れているぐらい。ならば、見直すべき。
最終追い切りはCWコースで単走。尾を上げている点は気になるが、手前を替えるタイミングは問題なく、かき込む動きもパワフル。追い切り時点ではわずかに太く見えるが、しっかり数は乗りこまれ息の心配はないだろう。あとは輸送でしっかり絞れれば、ダービーの再現も。
■1枠2番 ドウデュース【評価】
※残念ながら右前脚ハ行による出走回避となりました。
■2枠3番 アーバンシック【評価B】
武井厩舎[東] C・ルメール騎手
[1週前] 石神深騎手
【美浦南W】 良 80秒7-65秒4-51秒5-37秒6-12秒0 G前仕掛け
[今週] C・ルメール騎手
【美浦南W】 良 83秒7-67秒2-52秒2-37秒6-11秒6 馬なり
追い切りは1週前は3頭併せ。前2頭を内から捕まえに動いたが、思ったほど反応できず。6F80秒7ー3F37秒6ー1F12秒0。数字ほどの切れを感じさせなかった。それを踏まえて日曜坂路はビシッと追った。4F52秒1ー3F38秒4ー1F12秒4。これで状態が上がり、今週はルメールを背に2頭併せ。前を見ながらコントロールさせると、直線も抜群の手応えで鋭伸。6F83秒7ー3F37秒6ー1F11秒6。絶好調だった菊花賞の出来には及ばないが、高いレベルで安定している。
そもそもG1となれば、某大手有力ファームの馬が多数出走。しかも、その中でももっともポテンシャルを秘めている馬の背には必ずと言ってよいほどルメール騎手が配される。実際に今年のG1を振り返ってみるだけでも該当するケースが少なくない。単純な話が某有力ファームのエース騎手が現在国内ナンバー1騎手の彼ということなのだ。そうなると当然ながら、この暮れの大一番で彼が同馬に乗っている意味は大きい。少なくとも、ファーム側がもっとも今回のレースで勝利に近い存在と期待しているのは、この馬。それは間違いない。ただし、だからと言って闇雲にそこに頼るのもどうか。確かに素質馬揃いの某大手有力ファーム。とはいえ、競馬は競馬。馬が走る以上、その馬の適正をもっとも重視するべきという考えも出てくる。そうなると今回の舞台は決して同馬に向いてなどいない。豪快ではあるものの小脚の効かない不器用なタイプであるのも事実。すべてを含めて直前の精神面をしっかりチェックする必要がありそうだ。
■2枠4番 ブローザホーン【評価B】
吉岡厩舎[西] 菅原明騎手
[1週前] 助手
【栗東坂路】 良 56秒8-41秒4-26秒4-13秒1 馬なり
[今週] 菅原明騎手
【栗東坂路】 良 55秒9-41秒0-26秒8-12秒9 馬なり
坂路で併せ馬。僚馬より姿勢が低く、集中力もある。もともと追い切りで派手な動きを披露するタイプではない。
京都大賞典の負け方を見た際には終わってしまったかと思われたが、大分持ち直してきたといって良い出来。
雨が降ればベストではあるが、体調自体は宝塚記念制覇の頃と遜色ない状態に持ち直した。
■3枠5番 ベラジオオペラ【評価S】
上村厩舎[西] 横山和騎手
[1週前] 横山和騎手
【栗東CW】 良 95秒6-79秒7-65秒0-50秒7-35秒9-11秒2 一杯
[今週] 調教師
【栗東CW】 良 99秒3-82秒8-68秒1-53秒0-37秒3-11秒3 馬なり
2週前は上村師、1週前は横山和生騎手が乗って調教。前走時は夏負けがひどかったが今回は体調も回復し仕上がりきった。この中間は横山和騎手に追い切りに乗ってもらっても問題ないと判断できる仕上がりに至ったと判断でき、大阪杯の時と遜色ないほどに見える。「中山の2500mが合いそうだったし、良化度合いをあげたくてJCをスキップしてここに絞った」という陣営の話の通り、非常にいい出来でレースに臨める。普段の仕草でも良い意味で危ないところが出てきているし、これは身体的に余裕が出てきて走る時のサイン。上手く立ち回れるかどうかがこの馬の持ち味。追い切りの状態はいいだけにあとは、他馬との兼ね合いになる。
■3枠6番 ローシャムパーク【評価B】
田中博厩舎[東] T・マーカンド騎手
[1週前] T・マーカンド騎手 [12月12日(木)追い]
【美浦南W】 良 94秒3-79秒6-65秒1-50秒6-36秒2-11秒5 馬なり
[今週] 助手 [12月12日(木)追い]
【美浦南W】 良 83秒9-67秒4-52秒6-37秒7-11秒4 馬なり
1週前はマーカンドを背に併せ馬。マイルから意欲的に乗られたが、脚勢そのままに8F109秒8ー3F36秒2ー1F11秒5。今週は坂路で1本乗った後にウッドで併せ馬。4角では行きたがるところはあったが、直線はうまく息を入れてリラックスした伸び脚。ゴールを過ぎてからビシビシと追う、いかにも長めを意識した調教だった。6F83秒9ー3F37秒7ー1F11秒4。体の緩みもなく、きっちり態勢を整えた。
後は乗り難しい同馬を鞍上がどう操るか。
■4枠7番 スターズオンアース【評価B】
高柳瑞厩舎[東] 川田騎手
[1週前] 杉原騎手
【美浦南W】 良 82秒4-66秒3-52秒2-37秒5-11秒9 馬なり
[今週] 川田騎手
【美浦南W】 良 81秒9-66秒3-51秒5-37秒4-11秒8 馬なり
週中スポーツ紙がアップした記事が消されたことで話題となっている同馬。
春にドバイへと遠征した代償は安くはなかったということだろう。ダメージを抜くのに四苦八苦し、復帰してきたのは秋もソロソロ終わろうかという11月末の前走。そもそもが決してタフでもない脚元に爆弾まで抱えている牝馬なのだから当然と言えば当然か。その復帰戦だって、残念ながら戦前から万全ではないことは、もはやバレバレでしかなかった。何せ、折り合えるところまで気負いこそ軽減できたものの、そこから追ったところで本来の鋭い決め手は遂に調教段階ですら少しも確認することはできなかったのだから…。おそらく、反動がないレベルまで整った程度。これが嘘偽りない前走時の同馬のデキとみる。まぁ業界的に言えば8分の状態といったところか。
そして今回の追い切り。
1週前は杉原を背に6F82秒4ー3F37秒5ー1F11秒9。僚馬を大きく追走しながらも、直線は楽々と抜け出して1馬身の先着。今週は川田を背に併せ馬。追走して外を回したが脚勢に乱れなし。手綱を持ったまま回転を上げると、ゴール前はグイッと伸びて1馬身の先着。落ち着き払った気配に、威力十分の伸び脚は好調時と遜色なし。叩いて出来は前走以上。
川田騎手からしてみれば「もっと良くなっていて欲しかった」という気持ちが、コメントに出たのだと思うが、書かれていた内容ほどは酷くなかったということで苦情を入れたというのが実情だろう。
前走以上は間違いなく、あとは、「癖馬」という点を川田騎手がどう乗りこなすか。
■4枠8番 レガレイラ【評価A】
木村厩舎[東] 戸崎騎手
[1週前] 助手
【美浦南W】 良 96秒1-81秒2-66秒3-51秒6-37秒6-11秒7 強め
[今週] 戸崎騎手
【美浦南W】 良 84秒6-68秒6-53秒6-38秒9-11秒4 馬なり
1週前は意欲のマイル追い。厳しいラップを刻みながらも最後まで踏ん張って1馬身の先着。8F111秒6ー5F66秒3ー3F37秒6ー1F11秒7。日曜も坂路で気合を入れて1F11秒6。意欲的な調教を積んで迎えた今週の追い切りは戸崎騎乗で3頭併せ。6Fから徐々にペースを上げて、直線は2頭の間に入る実戦を意識したケイコ。伸びやかなフォームには無駄が一切なく、最後まで持ったまま矢のような伸び脚。6F84秒6ー3F38秒9ー1F11秒4。切れの良さがひときわ目立った。
ただ、正直を言えば、前走が究極と言って良いレベルに仕上がっていただけに、今回のデキが更に上向いているという印象はない。むしろ、無駄のない馬体から何の予備動作も必要なくガツンと一気にトップまでギアの上げられていた当時のことを思うと、この中間の動きというのは幾らかのダウン気配まで感じてしまう。中5週と詰まったレース間の影響からか、やや前脚の出に硬さが出てきてしまっているのも、そう思わせる根拠の一つといったところか。ただし、これはあくまで前走と比較しての話でしかない。そう、冒頭で究極というワードを使用したのは何も大袈裟な話ではないのだ。それぐらい凄みのある状態まで整っていたのである。それだけに直線で起きた、あの不利は同馬にとって悲劇以外の何ものでもなかったと断言できよう。とはいえ、じゃあ今回はもう用無しなのかと問われると、それはそれで答えはノーでしかない。確かに前走ほどの仕上がりではない。だが、硬さを見せるとはいえ、皐月賞に日本ダービーの頃よりは遥かにマシだし、今回の直前で見せたように未だ高い集中力は保てているのだから。むしろ、人気を落とすこと必至のここでこそ押えておくべき。G1馬の地力、侮るなかれ。
■5枠9番 ディープボンド【評価B】
大久保厩舎[西] 幸騎手
[1週前] 幸騎手 [12月12日(木)追い]
【栗東CW】 良 81秒6-65秒8-51秒2-36秒6-11秒3 稍一杯
[今週] 幸騎手
【栗東CW】 良 82秒3-67秒4-52秒6-37秒5-11秒5 一杯
CWコースで単走。前脚は高く上がり、脚さばきは迫力十分。追い切りで見せるこの動きは長年、変わっていない。見た目以上に時計が出る点も同じ。
■5枠10番 プログノーシス【評価A】
中内田厩舎[西] 三浦騎手
[1週前] 三浦騎手 [12月12日(木)追い]
【栗東CW】 良 80秒6-66秒0-51秒7-37秒0-11秒6 馬なり
[今週] 三浦騎手
【栗東CW】 良 68秒9-51秒9-35秒8-11秒1 一杯
海外帰りで1回緩ませて、そこからの立ち上げ。
今回の出走は「急遽」の意味合いも強く、だからこそ川田騎手に依頼が出来なかったということ。
CWコースで単走。活気にあふれ、完歩も大きい。残り200からは首を伸ばし、可動域も大きくなった。
動き的には最後まで気持ちの乗った追い切りだったが、良い頃を10とすれば8程度の状態。
この一追いでどこまで状態がアップするか?
ある意味ではそんな気楽な立場で乗れるという状況が功を奏するケースもある。
潜在能力的にはGI級。
距離は長いが、この乗り替わりが良い方に出れば。
■6枠11番 ジャスティンパレス【評価B】
杉山晴厩舎[西] 坂井騎手
[1週前] 坂井騎手
【栗東坂路】 良 54秒6-40秒2-25秒6-12秒3 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 54秒7-39秒6-25秒6-12秒5 馬なり
坂路で単走。前脚が遠くをつかみ、首も連動してよく動いている。タイム以上の評価をしていい動きだ。
追い切りの評価自体はBではあるが、この馬自体坂路での追い切りを行うようになってからというもの、調教で評価することが非常に難しくなった馬であることは否めない。
もともと有馬が一番の目標だったし、JCを使っても馬自体は結構元気。
前回は位置取りに失敗したが、坂井瑠騎手を配してきたことの意味が「前での競馬」であることは間違いなく、その想いが叶うか否かがカギ。
力は勿論通用レベルにあるので、スタートの鍵となるパドックでのトモの踏み込みには要注意。
■6枠12番 シュトルーヴェ【評価B】
堀厩舎[東] 鮫島駿騎手
[1週前] 助手 [12月12日(木)追い]
【美浦南W】 良 84秒0-67秒0-52秒1-37秒3-12秒0 馬なり
[今週] 助手
【美浦南W】 良 66秒1-51秒2-36秒4-11秒3 馬なり
1週前はダノンベルーガとの併せ馬。手応え優勢に伸びて5F67秒0ー3F37秒3ー1F12秒0。今週は3頭併せ。2頭を誘導して直線は外に馬体を並べたが、軽く仕掛ける程度で切れのある伸び脚。5F66秒1ー3F36秒4ー1F11秒3。ケイコ駆けする内の馬には手応えで見劣ったが、中のダノンベルーガには圧勝の伸び脚。集中力もあって、体の緩みも一切ない。いい状態で大一番を迎えられた。あとは能力が通用するかどうかだけ。
■7枠13番 スタニングローズ【評価A】
高野厩舎[西] R・ムーア騎手
[1週前] 助手
【栗東坂路】 良 53秒2-38秒6-25秒0-11秒9 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 55秒1-39秒4-25秒1-12秒0 馬なり
坂路で単走。ラチ沿いを真っすぐに、集中力を保ち続けて登坂した。フォームにも最後までブレがなかった。
引退レースの予定となるスタニングローズ。「もったいないぐらいのデキちゃう。エリ女の時も悪くなかったけど、あの時と遜色ないぐらいやわ」と陣営は胸を張る。
今の出来で前で自在に動けるようなら展開ひとつでこの豪華メンバー相手でも。
■7枠14番 ダノンベルーガ【評価C】
堀厩舎[東] 松山騎手
[1週前] 助手 [12月12日(木)追い]
【美浦南W】 良 84秒3-67秒4-52秒4-37秒4-12秒0 馬なり
[今週] 助手
【美浦南W】 良 82秒9-65秒9-51秒0-36秒3-11秒3 一杯
1週前はシュトルーヴェに劣勢。ゴール前の反応も渋かった。今週は3頭併せの真ん中に入ったが、両サイドに圧倒され、最後まで食らいつくのが精いっぱいの伸び脚。5F65秒9ー3F36秒3ー1F11秒3。数字はまずまずも、動きの鋭さ、迫力は感じられなかった。前走からの変わり身は見込めない。
■8枠15番 ハヤヤッコ【評価C】
国枝厩舎[東] 吉田豊騎手
[1週前] 助手
【美浦南W】 良 80秒1-64秒4-50秒1-36秒2-11秒7 強め
[今週] 吉田豊騎手
【美浦南W】 良 82秒8-66秒0-51秒9-37秒9-12秒6 強め
1週前は3頭併せで6F80秒1ー3F36秒2ー1F11秒7。外の2歳馬に先着も、内の馬の勢いには圧倒されてしまった。今週は吉田豊を背に併せ馬。直線は相手の勢いが上回り、一杯に追って最後は2馬身の遅れ。5F66秒0ー3F37秒9ー1F12秒6。実戦タイプとはいえ、動きの切れ、伸び脚の威力に物足りなさが残る。
■8枠16番 シャフリヤール【評価A】
藤原厩舎[西] C・デムーロ騎手
[1週前] 西塚騎手
【栗東CW】 良 83秒0-67秒2-51秒8-36秒4-11秒4 一杯
[今週] 西塚騎手
【栗東芝】 良 63秒0-48秒1-35秒4-11秒1 馬なり
去年は香港を心電図アウトで使えず競馬場で調教して有馬だったが、その時とは全然デキが違う。1年経ったが衰えた感じもない。
芝コースで単走。手前を替えるタイミングも、地面を蹴るパワーもさすがというレベル。
しかしながら、有馬記念では鬼門の大外枠。
仕上がりは良かっただけに、陣営はがっかりしたのも事実。
だからこその奇襲的な逃げや、最後方からの追い込みなど、極端な策に出てくることも考えられる点に注意。