現場の裏話コラム|vol.56|スマホ不適切使用で騎乗停止:競馬界に問われるルールと信頼。
先週の日曜に岩田康誠騎手がスマホの不適切使用で即刻騎乗停止に。判明した日から30日の騎乗停止処分を食らった。14日の中京から京都へ移動する際にYouTubeの音楽を視聴。コメント欄のあるサイトということでNGを食らい、朝日杯FSで騎乗予定だったダイシンラーなどが乗り代わりとなった。
最近は若手の不正使用がかなり問題となっており、アイドルジョッキーの藤田菜七子騎手もこれを機に引退を余儀なくされている。ただ今回のケースは通話や第三者との連絡ではなく、単なるYouTube。それだけにジョッキー内では「即騎乗停止はやりすぎなのでは」という声もあったようだ。実際に15日の京都ではルメール騎手らが岩田騎手の名前が入ったジョッキーパンツを着用。「JRAへの抗議だったのではないか」と物議を醸している。
翌週の栗東トレセンでもやはりこの件は大きな話題となった。あるジョッキーはいう。「僕も即刻騎乗停止はやりすぎかな、と思いますね。特にGIの場合は前売りで馬券を買っているファンも少なくない。岩田騎手だから買ったのに、と思うファンはいると思いますよ」とコメント。現在、JRAはタブレットを騎手に渡しており、認められたアプリからの音楽視聴が可能となっている。それだけに今回の岩田騎手は明らかに「ルール違反」で「凡ミス」ではあるのだが、騎乗停止を翌週まで待ってもよかったのではないか、というのが大半の意見だ。
一方、「正直、僕らも境界線がよくわからない部分があるだけに、ファンはもっとわからないのではないか」と話したのは、若手ジョッキーのひとり。「確かにJRAからタブレットの使用やスマホの使用について、しっかりと説明を受けているのは事実です。ただ今の世の中でスマホは不可欠。意図していなかったのにアウトと判定されてしまう場合はあるでしょう。ギャンブルは公正に行われる必要があり、我々ジョッキーは賞金も高額。それだけに『週末くらいすべて我慢しろ』という声にはある程度、納得しています。ただ今回の件みたいに、いきなり騎乗停止になるとファンは怖くて馬券を前日に買えないのではないでしょうか。どういった事例であれば即刻騎乗停止なのか。JRAがジョッキーに行っている説明はどんなものなのか。そのあたりをファンにもっと公開していいと思いますけどね」
ファンあっての中央競馬。今回の騎乗停止が「それはしょうがないな」とファンも納得してもらえるようにならないといけないのではないか。閉鎖的な傾向が強いJRAも、今回の件を機にいろいろと考えてほしいものだ。
栗東トレセン情報部:田所