現場の裏話コラム|vol.54|レモンポップの栄光とJRA賞への問い:フォーエバーヤング不在が映す課題

現場の裏話コラム|vol.54|レモンポップの栄光とJRA賞への問い:フォーエバーヤング不在が映す課題

 先週のチャンピオンズCはレモンポップがV。見事に有終の美を飾った。2着にはウィルソンテソーロ、3着にはドゥラエレーデが入り、昨年同様の着順で終わったという珍事も起きた。ともあれ、レモンポップがダート界最強を証明したわけだが、栗東では「フォーエバーヤングが出走していたらどうなるのだろう」という声が多く聞かれた。某栗東のトラックマンは語る。
 「3歳馬で出走したサンライズジパングが6着に入っています。健闘といえる部類で、騎乗した武豊騎手も『来年が楽しみ』と目を輝かせていました。勝ち馬とは0秒5差。今年10月のJDクラシックでは3着でしたが、勝ち馬フォーエバーヤングには1秒2差をつけられています。単純計算ではフォーエバーヤングが出走していた場合、レモンポップの遥か前にいた、ということにはなるんですよね」。フォーエバーヤングは海外遠征を積極的に行っており、春にはケンタッキーダービーで3着。秋もBCクラシックで3着に入っている。ローテーション的にはチャンピオンズCは厳しかったわけだが、他にも「主戦が同じ坂井騎手。ラストランでレモンポップに乗らないわけにもいかないだろうし、そのあたりを陣営が配慮したという話もある」とのこと。最強決定戦はファンも関係者も心が躍るだけに、「チャンピオンズCで直接対決が見たかった」と話す厩舎関係者の姿もいた。
 
 さて、もうひとつ栗東のマスコミで議論されていたのが「JRA賞」である。某日刊紙の記者は「そろそろあり方を考えないといけないのではないか」と話した。「おそらく最優秀ダート馬はレモンポップが獲るだろう。ただ現実的に最強馬はフォーエバーヤングではないか、という声の方がマスコミ内では多い。JRA賞は記者投票で決められるが、BCクラシック3着とはいえ、フォーエバーヤングになんとなく投票しづらいのは事実。昔、エルコンドルパサーとスペシャルウィークとグラスワンダーで年度代表馬の投票が割れ、決戦投票に持ち込まれたことがあったが、これもエルコンドルパサーの凱旋門賞2着や年間通じて日本レース出走なし、をどう判断するかでわかれた。フォーエバーヤングが活躍したことで、今後はダート最強クラスが色気をもって海外転戦する可能性はある。そうなると今回のように直接対決がないまま、投票を強いられるケースが増えそう。ダートに関しては高額賞金のレースもあるだけに、馬主は海外に強い興味がある。番組編成を考えて直接対決しやすい形にするとか、わかりやすい『最強決定戦』をつくってほしいね」。毎年なんかしらの意見が出てくるJRA賞だが、今年はダートが議論の対象となってきそうだ。


栗東トレセン情報部:田所