【チャンピオンズカップ】認定競走主幹菅原貴史の追い切り寸評
■1枠1番 クラウンプライド【評価A】
新谷厩舎[西] 横山武騎手
[1週前] 小崎騎手
【栗東CW】 良 76秒4-62秒8-50秒1-36秒8-12秒0 一杯
[今週] 助手
【栗東P】 良 69秒9-53秒3-38秒5-11秒1 馬なり
Pコースで併せ馬。勝負どころではもう前に出ており、ラストは鞍上の手が動かない中、力強く前に出た。首が下がって姿勢も低い。四肢の動きはもう少し速くできそうなので、そこまで無理していないことも分かる。出来の良さには太鼓判を押せる。あとは自分の競馬が出来るか否か。
■1枠2番 レモンポップ【評価S】
田中博厩舎[東] 坂井騎手
[1週前] 坂井騎手 [11月21日(木)追い]
【美浦南W】 重 96秒0-79秒5-64秒7-50秒1-36秒8-11秒5 直強め
[今週] 助手 [11月28日(木)追い]
【美浦南W】 稍 82秒4-66秒2-50秒6-36秒2-11秒3 G前仕掛け
13日はマイル追い。8F115秒4ー5F69秒2ー3F38秒5ー1F11秒6。3頭併せの内から余力たっぷりに伸びきった。1週前は坂井瑠が駆け付けて併せ馬。6Fから軽快に飛ばして、直線はあっさりと抜き去って3馬身の先着。6F79秒5ー3F36秒8ー1F11秒5。直前は単走追いに切り替えたが、手脚が良く伸びたダイナミックなフォームに、直線も勢いそのままに真っ直ぐ伸びきった。6F82秒4ー3F36秒2ー1F11秒3。手応えの渋さ、重苦しさは一切なく、馬体も筋肉が盛り上がり、はち切れんばかり。1週前に騎乗した鞍上は「迫力」という点で去年に劣ると発言はしているが、前走以上は間違いなく、文句なしの出来。
そもそも、前走は全く勝負にならないぐらいに思っていた。実際、決して状態的に良くなどはなかったはず。信じられないのなら、前走の実質の最終追い切りにあたる10/10の調教でも見直して欲しい。おそらく、今の時代ならば、このレベルの馬の調教VTRではインターネットを探れば、どこかには落ちていよう。そして、あれを見れば少なくとも完調にないことは理解してもらえるのでは。何せ、今やダート界最強の同馬が追っても追ってもピクリとも反応することなく先導馬に少しも迫ろうともしなかったのだから…。加えて前走時の中間はというと残暑が厳しかったにも関わらず、何時になく美浦の滞在期間が長かった。だからこそ、これは夏負けして仕上げが間に合っていない可能性大とみたのである。ここに当日のドックでの覇気のなさを見て確信。「勝負にならない」との結論へと辿り着いてしまった。しかし、終ってみれば地力の違いをまざまざと見せつけられることに。何てことはない、今や少々デキがなくとも最低限に動けさえすれば、国内では負けないレベルの馬ということか。その前走時に比べれば今回は雲泥の差。
■2枠3番 ハギノアレグリアス【評価A】
四位厩舎[西] 岩田望騎手
[1週前] 岩田望騎手
【栗東坂路】 良 52秒2-37秒7-24秒6-12秒5 一杯
[今週] 岩田望騎手
【栗東坂路】 重 55秒4-40秒4-25秒9-12秒7 馬なり
坂路で単走。力感があり、テンポもなかなか。首を使って走る気も見せている。タイムはひと息だが、走りそのものは十分に及第点。
去年は6着だったが、展開は不向きだったし、1週前の日曜に時計を出せないくらい状態が良くなかったが、今年は順調に来た点は評価。内枠を引けたし、展開も向きそう。あとはバテてきた馬を捌ければ去年よりやれるのは間違いない。
■2枠4番 ペプチドナイル【評価A】
武英厩舎[西] 藤岡佑騎手
[1週前] 藤岡佑騎手
【栗東CW】 良 85秒4-69秒3-53秒4-38秒7-12秒0 馬なり
[今週] 藤岡佑騎手
【栗東坂路】 重 56秒2-40秒0-24秒7-11秒9 馬なり
坂路で併せ馬。道中は自分のペースでゆったり走っていたが、ここぞのポイントで自ら手前を替え、スピードを上げた。頭の良さが伝わる動きだった。
あれだけ自分勝手に走っていた馬が、これだけ抜くところを抜いて最後まで諦めなくもなっているのだから、そういうこと。この中間も、かつてが嘘のような優等生振り。まさに覚醒というヤツか。ここも有力。
■3枠5番 ペイシャエス【評価B】
小西厩舎[東] 横山和騎手
[1週前] 横山和騎手 [11月21日(木)追い]
【美浦南W】 重 69秒9-54秒3-39秒3-12秒1 馬なり
[今週] 横山和騎手
【美浦南W】 重 67秒3-51秒3-36秒8-11秒5 馬なり
追い日は横山和が手綱をとって微調整。立ち上げの1本目となった1週前は5F69秒9ー3F39秒3ー12秒1。無理せず馬の気に任せたが、フットワークは軽く、ラストも軽快な伸び脚。今週は単走で6F追い。負荷をかけての乗り込みとなったが、直線も乱れることなく真っ直ぐ伸びきった。5F67秒3ー3F36秒8ー1F11秒5。馬体もふっくらと見せており、良かった前走の出来をがっちりとキープ。
■3枠6番 ドゥラエレーデ【評価B】
池添厩舎[西] R・ムーア騎手
[1週前] 助手
【栗東坂路】 良 55秒4-40秒2-26秒2-12秒6 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 重 56秒2-39秒8-24秒7-12秒2 馬なり
坂路で単走。やや力みが見られ、勝負どころでも気が悪い感じで嫌がるしぐさ。ラストで見せたフォームはさすがというべきだが、そこまでのマイナスがいただけない。
状態自体は悪くないが、包まれたくない気性の同馬だけに、その点が気がかりということでこの評価も、普通に走れれば上位に食い込んできてもおかしくないポテンシャルはある。
■4枠7番 セラフィックコール【評価A】
寺島厩舎[西] C・デムーロ騎手
[1週前] 助手 [11月21日(木)追い]
【栗東CW】 良 80秒8-65秒3-50秒7-36秒0-11秒4 一杯
[今週] C・デムーロ騎手
【栗東CW】 重 84秒1-68秒4-53秒3-37秒3-11秒3 馬なり
CWコースで併せ馬。直線を向き、ひとにらみするとパートナーが顔をそむけて嫌がった。そこからは余裕十分に前へ。四肢がしっかりと伸び切っていた。
今回はブリンカーも着けるし、動きにも集中力が出てきた。気性が幼くて伸び悩んでいるが、相当走る馬だし、休み明けもいい。軽視は禁物。
■4枠8番 ウィルソンテソーロ【評価B】
小手川厩舎[東] 川田騎手
[1週前] 助手
【美浦南W】 稍 66秒5-52秒0-38秒2-12秒3 馬なり
[今週] 助手
【美浦坂路】 重 54秒8-39秒5-25秒7-12秒4 馬なり
前走で遂に悲願のG1初制覇を圧勝の形で成し遂げた同馬だが、あの強さが表面化すればするほど、尚更に今年の2月のフェブラリーSでの大敗が不可解に思えて仕方がない。確かにハイペース。追いかけ過ぎた感はある。とはいえ、結果的には同じような戦法で挑んだペプチドナイルが押し切っているのだ。それを踏まえると、あの時の同馬のパフォーマンスというのは低調だったと言わざるを得ない。そもそも、当時の主戦騎手だって少々の厳しい流れでも同馬の身体能力ならば何とかなると確信していたからこそ、あそこまでの積極策で頂点獲りに挑んだはず。一体、あの唯一の大崩れは何を理由に…。こうなると、もう言い訳はできないというのが正直なところ。結局、G1で戦えるレベルに仕上げられていなかったのでは。振り返ってみれば、あの頃の陣営は同馬のテンションの高さを気にしてばかり。結果、当日のイレ込みを恐れ可愛がりすぎていたということか。ただし、その苦い経験によって心身のバランスを取る術を小手川厩舎が学んだのも事実。だからこその今であろう。この中間も前走同様に調整に甘さはなし。
1週前はウッドで5F66秒5ー3F38秒2ー1F12秒3。芯の入ったフォームは力感にあふれ、ラストも持ったまま伸びきった。今週は坂路。重い馬場を苦にすることなく加速ラップを刻み、最後も勢いのある伸び脚。筋肉量が増えて、馬体もはち切れんばかり。前走以上とは言えぬも、高値安定。
■5枠9番 テーオードレフォン【評価C】
梅田厩舎[西] 三浦騎手
[今週] 助手 [11月28日(木)追い]
【栗東CW】 良 80秒4-65秒1-51秒2-37秒2-12秒0 一杯
CWでビシッと一杯に追われたが、ラスト1ハロン12秒0と伸びあぐねたイメージ。中1週でも意欲的なのはいいが、さほど大きな上がり目は感じない。
■5枠10番 アーテルアストレア【評価C】
橋口厩舎[西] 菱田騎手
[1週前] 菱田騎手
【栗東CW】 良 84秒4-68秒4-53秒3-38秒2-12秒0 強め
[今週] 助手 [11月28日(木)追い]
【栗東坂路】 良 53秒6-39秒4-26秒0-13秒1 馬なり
木曜の坂路で併せ馬。やや遅れたものの、まだまだ手応えに余裕はあったし、もともと稽古は地味なタイプだ。しっかり乗り込まれて仕上がりは悪くない。
その上でこの馬には「展開がハマるか否か」に尽きる。
■6枠11番 ミトノオー【評価B】
牧厩舎[東] 松山騎手
[1週前] 助手
【美浦坂路】 稍 66秒1-48秒5-31秒5-14秒9 馬なり
[今週] 木幡巧騎手
【美浦南W】 重 82秒8-66秒8-51秒7-36秒8-11秒6 強め
チーク着用でビシビシと気合を入れられる意欲的な内容。相手の脚勢が上だったが、最後までしっかりと食らいついて同入フィニッシュ。5馬身追走の負荷に、6F82秒8ー3F36秒8ー1F11秒6の数字なら褒められていい。馬体も引き締まり、使った効果は十分。その上で、この馬も自分の競馬が出来るか否かに尽きる。
■6枠12番 サンライズジパング【評価A】
音無厩舎[西] 武豊騎手
[1週前] 助手
【栗東坂路】 良 55秒6-40秒9-26秒7-13秒2 馬なり
[今週] 武豊騎手
【栗東坂路】 重 51秒4-37秒6-24秒4-12秒1 強め
坂路で併せ馬。510キロ前後の馬体だが、もっと大きく見せる。脚が長く、首を上下にうまく使うからだろう。ラストまで迫力十分。完歩も大きい。
右回りでも3-4コーナーで左手前を繰り出してしまう馬。明らかに左回りの方が良い。
そして能力自体も、現3歳世代のダート路線に限れば、主力と呼べる一頭。どう低く見積もっても、同馬はトップ5には入る実力の持ち主ではあろう。そうなると仮に相手が古馬一線級であっても大きく見劣ることはあるまい。なぜなら、同馬が力の差を見せつけた他の同期達が古馬相手であっても一歩もヒケを取らず戦えてしまっているのだから…。それこそ、先月に行われたJBCシリーズで活躍したアンモシエラにチカッパといった辺りが記憶に新しいか。その比較から行けば、まず今回のメンバーに入っても同馬が役者不足ということはない。ただし、気になる点もなくはない。それは不器用な追わせるタイプであること。要は機動性に乏しい。広々として直線も長いコースでのバテ合い、こんな舞台だったら全てを託す価値もあったかもしれない。しかし、今回はロス厳禁の小回り中京コース、果たして同馬の持ち味を生かし切れるかどうか。ゆえに鞍上もミスマッチのような気がしてならない。同馬には巧さよりも追える豪腕タイプこそが最適。素質確かも今回は試金石の一戦。
■7枠13番 ミックファイア【評価B】
渡辺和厩舎[地方] C・ルメール騎手
[今週] 矢野騎手 [11月26日(火)追い]
【大井外】 良 65秒4-52秒0-38秒2-12秒8 馬なり
矢野貴を背に単走。スタートから回転ピッチを上げて軽快に飛ばすと、コーナーさばきもスムーズ。直線は馬場の真ん中に進路を取ったが、余力たっぷりに真っ直ぐ駆け抜けた。5F65秒4ー3F38秒2ー1F12秒8。馬体は柔らかく仕上がり、肌も薄く、しっとりと見せる状態。体調は前走以上。
■7枠14番 スレイマン【評価B】
池添厩舎[西] 斎藤騎手
[1週前] 西村淳騎手
【栗東CW】 良 83秒7-68秒4-53秒3-37秒8-11秒8 強め
[今週] 斎藤騎手
【栗東坂路】 重 54秒7-39秒2-24秒7-12秒2 馬なり
坂路で単走。姿勢が低く、上体がブレないので非常に安定感がある。前肢のかき込む迫力がなかなかいい。
■8枠15番 グロリアムンディ【評価C】
大久保厩舎[西] 北村宏騎手
[1週前] 荻野琢騎手 [11月21日(木)追い]
【栗東CW】 良 98秒9-82秒0-67秒0-52秒7-37秒9-11秒9 一杯
[今週] 助手
【栗東坂路】 重 52秒8-38秒2-24秒9-12秒5 一杯
坂路で単走。終始、右を向き、スピードが上がっても右を向いたまま。これでも真っすぐに登坂できるので問題ないのかもしれないが、気になるところではある。
■8枠16番 ガイアフォース【評価S】
杉山晴厩舎[西] 長岡騎手
[1週前] 長岡騎手
【栗東坂路】 良 49秒8-36秒9-23秒8-12秒0 一杯
[今週] 長岡騎手
【栗東坂路】 重 51秒6-37秒3-24秒0-12秒0 馬なり
坂路で単走。周囲の馬たちと比べ、前脚の上がり方が段違い。首の使い方もさすが。そこまでスピードを感じさせないのは完歩の大きさゆえだろう。
スタミナさえ許せば延々と11秒半ばのラップを並べられるように類希な身体能力の持ち主。もちろん、この数字は芝の高速馬場時の話である。とはいえ、実績を見ての通り、その異常なまでのスピードの持続性は全く馬場を問わない。もはや、同馬が競走馬として高性能であることを疑う余地はなかろう。ただし、それを生か切れない絶望的な憂いが同馬には共存している。それは急激なギアアップに対応できない点、要は瞬発力不足。これこそが現在も同馬がトップに君臨していない最大の理由でしかない。結局、日本特有の中弛みのスローペースによって生じる瞬発力戦との相性がすこぶる悪いのである。とにかく噛み合わない…。それを思うと初ダートがG1という厳しい状況の中でも2着した2走前の内容というのは納得。それはそうだろう。限りなくワンペースで流れるダート戦なんて同馬の短所のみが消える理想の条件でしかないのだから。故に狙い澄ましてダートの大一番のここへと臨戦してきたということ。不健康なだけに心身共に研ぎ澄ましての一発勝負にも好感しかなし。コーナー4つの小回りをクリアできるかどうか。状態からは要注目。