現場の裏話コラム|vol.53|日英ダービー馬対決!ジャパンCに込められた期待と現実
今年のジャパンカップは久しぶりの盛り上がりを見せた。久しぶりというのは他でもない。外国馬に気の利いた、それもかなり高いレベルの馬が2頭、参戦したことだ。
3歳時にイギリス、アイルランドのダービーを制し、ヨーロッパの事実上、中距離王決定戦である愛チャンピオンS、そして米ブリーダーズCターフを連勝したオーギュストロダンと、今年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでそのオーギュストロダンを破ったゴリアットの2頭だ。
迎え撃つ日本勢はドウデュースを筆頭に7頭のGI馬が名を連ね、しかもオーギュストロダンがディープインパクトのラストクロップであるのに対し、ドウデュースは父ハーツクライ。因縁のある日英ダービー馬同士の対決なら、否が応でも盛り上がる。
そのうえゴリアットのオーナーの一人であるジョン・スチュワートが、「世界最高の芝のレースはヨーロッパにある。最強クラスが出走することで、改めてそれを日本のファンに示したい」くらいのビッグマウス。こうしたプロレス的な演出は、本当に長らく日本の競馬界には見られなかったことだった。これについては、美浦の記者連中の中にも歓迎する声が多かったそうだ。
「結果はどうあれ、ああいうパフォーマンスは楽しいですよ。競馬はやっぱり興行ですから」と若手記者が言えば、「今の日本の競馬界は綺麗事ばかり。つまらないとは言わないまでも、正直、物足りなさはある。もっとも、有力馬のほとんどが、元を辿れば同じ財布(オーナーブリーダー)なんだから無理もないけど」というのはベテラン記者。
実はその意味でも、ゴリアットのオーナーのコメントは耳目をひいた。「日本では競馬業界の60%が一つのファミリーによってコントロールされている」と指摘したのだから。「アメリカでもヨーロッパでも同じことが起きているが」と注釈もつけて、だが。
だからこそ、彼のビッグマウスは好意を持って受け止められた、と先のベテラン記者は続ける。「本来なら日本のファンから総スカンを食らいそうなコメントだったけど、〝一つのファミリー〟について、こうハッキリ口にした日本の競馬関係者はいない。そりゃ我々だって痛快だったからね」と笑う。
結果はゴリアットは6番人気で6着。オーギュストロダンは4番人気で8着に沈んだ。しかし、これが日本馬の力、などと気楽に考えることはできまい。全体の時計は今年の日本ダービーよりも1秒2も遅く、例によって超スローの中での瞬発力勝負。馬場やレースの質に対する適性差が出ただけだから。
これだけのメンバーが揃っても、心からの大喝采を送れないのが現実だ。いい加減、使い分けをヤメて、本気でレースの質を高める努力をするべきではないのか。
今回のジャパンCは大幅な売上減に入場者減。深刻な事態の前触れのように思えてならない。取り越し苦労ならいいのだが……。
美浦トレセン情報部:吉本