【スプリンターズステークス】認定競走主幹菅原貴史の追い切り寸評
■1枠1番 オオバンブルマイ【評価C】
吉村厩舎[西] 武豊騎手
[1週前] 武豊騎手 [9月19日(木)追い]
【栗東坂路】 良 52秒0-37秒3-24秒2-11秒9 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 54秒3-39秒7-25秒3-12秒2 馬なり
1週前は武豊騎乗で併せ馬を行い4馬身先着。今週は単走。行きっぷりそのものはよく、元気は良いので体調は悪くない。ただし、相変わらずクビの高い走りで力が前へではなく上へと逃げてしまっている。前走は届いたとは言え、今の馬場で追い込みの脚質もネック。展開が向くかどうかがカギ。
■1枠2番 トウシンマカオ【評価A】
高柳瑞厩舎[東] 菅原明騎手
[1週前] 助手 [9月19日(木)追い]
【美浦坂路】 重 54秒8-39秒5-25秒5-12秒6 馬なり
[今週] 菅原明騎手
【美浦南W】 良 84秒4-67秒4-52秒7-37秒8-11秒6 馬なり
1週前は坂路で単走。今週は菅原明騎乗で古馬1勝クラスと併せて半馬身先着。直線に向くまでは少しモサモサしていたが、馬体を並べるとスッと反応し楽に前へと出た。前走後の回復が早く中2週でも19日と22日に坂路で時計を出せている過程も注目に値する。ケイコから引き続き好調と判断できるが、大跳びで不器用なため、レースでフルに能力を発揮するためには邪魔されにくい形が理想。内有利の今の中山で1枠2番の枠からいかに捌くかが課題。
■2枠3番 ウインマーベル【評価B】
深山厩舎[東] 松山騎手
[1週前] 助手 [9月19日(木)追い]
【美浦南W】 重 65秒5-50秒6-36秒9-11秒5 一杯
[今週] 助手
【美浦南W】 良 67秒3-52秒4-37秒6-11秒5 馬なり
5月の京王杯SCから予定通りぶっつけのローテ。8月中旬に美浦近郊のKSトレセンから帰厩。1週前は古馬3勝クラスと併せて5馬身の大差先着、今週は大きく先行した古馬2勝クラスを追いかけて最後は併入。躍動感ある動きで胸前の筋肉の盛り上がりも目立っていた。好枠を引いたことで松山騎手の乗り方に注目が集まる。
■2枠4番 エイシンスポッター【評価C】
吉村厩舎[西] A・シュタルケ騎手
[1週前] A・シュタルケ [9月20日(金)追い]
【栗東坂路】 良 52秒8-37秒4-24秒6-12秒3 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 54秒5-39秒7-25秒3-12秒3 馬なり
1週前はA・シュタルケ騎乗で単走。今週はハロー明けの馬場で単走。前駆をダイナミックに使えていたが、道中少し気むずかしい面を見せ、脚の捌きが雑になりスムーズさを欠いていたのが気になる。
■3枠5番 ナムラクレア【評価A】
長谷川厩舎[西] 横山武騎手
[1週前] 横山武騎手 [9月19日(木)追い]
【栗東坂路】 良 50秒4-37秒1-24秒0-12秒0 一杯
[今週] 調教師
【栗東坂路】 良 53秒6-38秒2-24秒0-11秒7 馬なり
1週前は横山武騎乗で大きく先行した古馬3勝クラスを追いかけて最後は3馬身先着。今週は調教師騎乗で単走。併せた相手をスッと交わし突き抜けた先週の動きも良かったが、全身に余計な力が入ることなく駆け上がりラスト1ハロン11秒7を記録した今週のケイコもスピード感十分。溜めて弾けさせるメニューが中心と今回は調教過程に工夫が見られる。基本的に追い切りは動く馬で、AかSの評価ばかりにはなるが今回も高いレベルで安定。絶対的な能力差が小さいスプリント路線では、スムーズな競馬ができた馬が勝つ。直線で不利があった前走の敗戦で不当に評価が下がる今回は配当の面でも注目の存在。初騎乗の横山武騎手の手綱さばきに注目。
■3枠6番 ママコチャ【評価A】
池江厩舎[西] 川田騎手
[1週前] 助手 [9月22日(日)追い]
【栗東坂路】 良 57秒0-40秒4-25秒9-12秒7 馬なり
[今週] 川田騎手
【栗東坂路】 良 53秒5-39秒2-25秒7-12秒2 馬なり
22日は坂路で単走、今週は川田騎乗で古馬2勝クラスと併せて半馬身先着。僚馬の真後ろにつけて最後は交わすケイコはセントウルSの最終追い時と同様。そのセントウルSで持ち直せたのは、先導馬を前に置いて我慢させ、そこから追い抜くことで馬体の収縮を教え直したことで再び切れるようになったから。その成功を教訓に、今週も調教が施されている。体はさらにすっきりし、反動より上積みが期待できる雰囲気だ。
■4枠7番 マッドクール【評価A】
池添厩舎[西] 坂井騎手
[1週前] 坂井騎手 [9月20日(金)追い]
【栗東CW】 良 82秒4-66秒5-51秒1-35秒9-10秒9 一杯
[今週] 坂井騎手
【栗東坂路】 良 51秒9-37秒4-24秒6-12秒3 馬なり
4月の香港・チェアマンズスプリントプライズ以来のレースで、8月下旬に外厩のノーザンファームしがらきから帰厩。1週前は坂井騎乗で単走、今週も坂井騎乗で単走。1週前にラスト1ハロン10秒9を記録したケイコも良かったが、全身を大きく使い、走る気に溢れた今週の栗東でのケイコも素晴らしかった。スピードよりパワー寄りで、7枠、8枠に入るようだとスピード負けしそうだが、4枠なら問題なし。あとは時計がかかる馬場の方が良いのは間違いなく、当日の馬場状態にも注意。
■4枠8番 モズメイメイ【評価C】
音無厩舎[西] 国分恭騎手
[1週前] 助手
【栗東坂路】 良 64秒8-45秒5-28秒7-14秒0 馬なり
[今週] 国分恭騎手
【栗東坂路】 良 53秒9-38秒3-24秒6-12秒3 馬なり
1週前はほぼ15-15、今週は国分恭騎乗で単走。軽やかに駆け上がっていたが、手前を何度も替える場面があったのは気になる。トモが開くのはこの馬の癖だが、見栄えがいいものではない。今回は単走中心のメニューでもあり追い切り自体はあまり評価できないが、立ち回りの上手くなった現状をどう評価するかがカギ。
■5枠9番 ムゲン【評価C】
P・ン厩舎[海外] K・ティータン騎手
[今週] 助手 [9月26日(木)追い]
【中山芝】 良 59秒3-43秒5-13秒3 馬なり
滞在先の中山競馬場で帯同馬を目標に併せ馬。最後は楽に交わしきったが、慣れない環境で物見をずっとしていて集中し切れていない。その様な動きでもあり、追い切り評価に関しては高くは付けられないが、ただし、追い切りがレース結果に直結するか否かは何とも言いにくい馬。スプリント天国の香港で、高松宮記念3着のビクターザウィナーに2戦続けて先着している点は注意が必要。
■5枠10番 ピューロマジック【評価B】
安田厩舎[西] 横山典騎手
[1週前] 調教師 [9月20日(金)追い]
【栗東坂路】 良 54秒9-40秒3-25秒9-12秒6 馬なり
[今週] 調教師
【栗東CW】 良 55秒4-39秒0-11秒5 馬なり
1週前は調教師騎乗で単走。今週は調教師騎乗で先行した古馬3勝クラスと併せて最後は2馬身先着。直線で内に出してゴーサインという実戦に即した調教で、僚馬に並びかけると加速力の差で最後は突き放した。ただし、CWで当週に併せ馬はこれまで見られなかったパターン。近3走の直前追いと比べてより終い重点のケイコだったため、本番で控えることを多少は意識した仕上げかもれない。その上で忘れてはならないのは、「逃げ馬は体調よりも同型との兼ね合いと発馬次第」ということ。
その意味ではと当日の気配が一番重要な馬。
■6枠11番 ダノンスコーピオン【評価B】
福永厩舎[西] 戸崎騎手
[1週前] 助手 [9月20日(金)追い]
【栗東坂路】 良 53秒8-37秒7-24秒0-11秒8 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 54秒5-38秒4-24秒4-12秒0 馬なり
1週前は単走、今週も単走。モタれる面を見せてしまうのは相変わらずだが、左右に動いてしまいそうなところを鞍上がうまく制御していた。体全体をリズミカルに使えている。前走もこの馬なりに調子は良かったが、少々太かった点が結果に影響。その前走以上の仕上がりであるということだけは申し上げておく。
■6枠12番 サトノレーヴ【評価A】
堀厩舎[東] D・レーン騎手
[1週前] 助手 [9月19日(木)追い]
【美浦南W】 重 63秒3-48秒4-34秒6-11秒2 馬なり
[今週] D・レーン騎手
【美浦坂路】 良 54秒6-39秒5-24秒9-11秒9 馬なり
1週前は2歳1勝クラスを追いかけて4馬身先着、今週はレーン騎乗で古馬2勝クラスのサトノレガオンなど2頭を追いかけて最後は併入。堀厩舎と言えば直前の南W追いが定番だが、2週前に南で5F65秒台、1週前に南Wでさらに5F63秒3-4F48秒4-3F34秒6-1F11秒2という猛時計を出し、当週も攻めに攻めた異例の調整。いよいよ本格化ムードを馬が迎え、堀厩舎が照準を合わせてきたと見えてしまうが、調教の強さと馬の動きにギャップが見えるのは少しだけ気になるポイント。スパルタ調教ながら舌が外に出ていて真剣味に欠ける姿が確認できた。調教過程は文句なしで評価Aとしたが、これが余裕の表れなのか、気が入っていないことの表れなのか、このギャップだけが心配。これも、当日の気配に要注意。
■7枠13番 ルガル【評価B】
杉山晴厩舎[西] 西村淳騎手
[1週前] 西村淳騎手 [9月19日(木)追い]
【栗東坂路】 良 50秒9-36秒7-23秒6-11秒7 末強め
[今週] 西村淳騎手
【栗東坂路】 良 53秒1-38秒1-24秒1-11秒8 馬なり
高松宮記念後に骨折が判明し半年ぶりのレース。1週前は西村淳騎乗で併せ馬、今週は同騎手騎乗で単走。1週前、今週とも骨折明けのブランクを感じさせず豪快に突き抜けた。後は本番での息保ちだけが課題。
■7枠14番 ビクターザウィナー【評価B】
シャム厩舎[海外] J・モレイラ騎手
[今週] J・モレイラ騎手
【中山芝】 良 54秒7-38秒1-11秒6 馬なり
滞在先の中山競馬場でモレイラ騎乗で単走。調整程度で最後まで馬の気に任せたが、中山の坂を軽やかに駆け上がりパワーがあるところを見せた。高松宮記念3着が物語るように日本の芝の適性も高い。ただし、7枠14番の枠からすんなり先行できるかは未知数。モレイラ人気も集めそうで、取捨の頭角ラインに居る一頭。
■8枠15番 ヴェントヴォーチェ【評価C】
牧浦厩舎[西] C・ルメール騎手
[1週前] C・ルメール騎手 [9月19日(木)追い]
【栗東坂路】 良 52秒0-38秒0-24秒6-12秒2 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 53秒6-39秒1-25秒4-12秒5 馬なり
昨年の高松宮記念後に繋靭帯炎を発症し1年半ぶりのレース。1週前は単走、今週も単走。そこまでケイコ駆けしない馬だけに、1週前の段階で自己ベストに近い時計を出せたことは評価可能。ただし、1週前は最後の脚が止まり加減で、後脚の蹴りが物足りない。さすがにブランクの長さを感じる。ちなみに、ルメール騎手にしても乗り馬がいなかった事から受けた騎乗であり、大きな期待は禁物か。
■8枠16番 ウイングレイテスト【評価A】
畠山厩舎[東] 松岡騎手
[1週前] 松岡騎手 [9月19日(木)追い]
【美浦南W】 重 81秒8-66秒5-51秒9-36秒8-10秒9 G前仕掛け
[今週] 松岡騎手
【美浦南W】 良 67秒6-52秒5-37秒8-10秒9 馬なり
1週前は松岡騎乗で併せ馬、今週は松岡騎乗で単走。1週前は馬場の外、今週は馬場の内から豪快に脚を伸ばし2週連続でラスト1ハロン10秒9。今週は軽く仕掛けられるとグッと重心を沈め、走りがブレることなく真一文字に伸び、やる気になればいくらでも走ってしまいそうな勢いがあった。年を重ねれば速い時計の対応が苦しくなるものだが、7歳を迎えて時計面の対応に進化が伺え、完全な短距離馬へのシフトにも成功。今回の相手でもスピードは一切見劣らない。
<総括>
いつもは各馬の短評を申し上げているが、今回は「S評価馬不在」という点について触れておきたい。
今回6頭の馬に「A評価」を下したが、正直な話を言えば各馬「過去最高」という動きは見られなかった。
GIにもなると、「過去最高の動き」と言える馬も多く出てくるのだが、今回は「ベストではないが過去3本の指に入る」というような動きに留まった馬が多く、S評価不在の評定となった。
しかしながら、あくまで追い切りは追い切りであり、ピークはここではない。
その意味で「5歳6歳」といった馬達が中心となっているスプリンターズSらしい追い切りであったとも言える。
当日の馬場状態を含め、阿修羅ゴールデンアロー指定競走として、直前まで裏取りを続けた上での最終結論にご期待いただきたい。