現場の裏話コラム|vol.44|復活の兆し:ベテラン騎手の逆襲に期待
秋競馬も始まり、今週からはいよいよGIシーズンが始まる。この時期になるとトップジョッキーの乗り馬などにマスコミも注目。特に栗東ではルメール騎手と川田騎手がどの馬を選ぶのか、というのは馬券的中の意味でも欠かせない材料のようである。一方。今年何人かの厩舎関係者から聞かれたのは「ベテランのあの騎手が息を吹き返しつつある。この秋のGIで一発があるかもしれない」という声。ベテラン騎手というのは岩田康騎手である。
栗東の某トラックマンは語る。
「一時はブエナビスタやジェンティルドンナなどで大レースを勝ちまくり、圧倒的な存在感を見せていました。ただ素行の悪さなども目立つようになり、外国人騎手が増えてくるにつれて騎乗回数が激減。ノーザンファームの幹部に『おれもイワタってカタカナにしたら乗せてくれるのか』と酒の席で噛みつき、プライドのなさにガッカリしたという牧場サイドの声もありました。そんな状況が続き、昨年はわずか25勝。GIに騎乗する機会すら減っており、もはや終わった人という立ち位置になっていました。ただ今年は昨年よりも気合がいいですね」。先週終了時点ですでに28勝をマーク。先週も日曜中山10Rで7番人気のヒューゴを持ってくるなど、乗りっぷりの良さが目立っている。その躍進の原動力となっているのが、今はトップトレーナーとなった上村調教師だ。
前出のトラックマンは「9月15日の中京5R・新馬戦で1番人気の支持に応えたスリーキングスは上村厩舎の馬でした。乗っていたのが岩田康騎手です。ゴール後に落馬するアクシデントはありましたが、能力の高さは折り紙付き。今年の2歳戦でも注目の馬となるでしょう。実は岩田康騎手、この上村調教師に最近は重宝されているのです。それによって成績がアップしているのは間違いないでしょう」。
今年の大阪杯をベラジオオペラで制するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの上村厩舎。昨年まで岩田康騎手の騎乗回数は少なかったが、今年に入ってから急増。今年の勝利のうち、8勝が上村厩舎という数字が出ている。「上村調教師はもともと、息子の岩田望騎手をかわいがっていました。ここにきて父親への依頼も増えてきた、ということでしょう。岩田騎手も関係者には『もう1回、大レースを勝ちたい』と話しており、まだ意欲は薄れていないようです。一発のあるタイプだけに、この秋はそろそろ面白いかもしれません」。往年の輝きとまではいかなくとも、存在感を示すことができるか。
栗東トレセン情報部:田所