現場の裏話コラム|vol.43|若手騎手の未来を揺るがす噂とメディアの功罪

現場の裏話コラム|vol.43|若手騎手の未来を揺るがす噂とメディアの功罪

 例の事件の余波か、トレセンや競馬場では真面目な若い騎手の間で妙な噂が飛びかっている。ただ、噂といっても根も葉もない物もあれば、グレーな物まで様々だ。
 基本的に、若手騎手というのは、旧態依然とした古いマスコミのターゲットになりやすい。騎手学校を出たての10代の世間知らずが、突然大金を手にしてチヤホヤされるのだから、人生経験豊富な年長者からの「社会勉強へのお誘い」を無下には断れまい。それどころか、積極的に飛び込んでいくのも無理はない。ここでしっかり道を示してくれる師匠筋が居てくれればいいのだが、「先輩騎手の誘いだったら安心」とばかりに気持ちは緩むかもしれない。結果として、将来有望な若手騎手が、ある時を境に成績不振に陥ったり、伸び悩む。
 そして、こうした例や、このところの不祥事も、栗東所属騎手に多い印象があった。これは長年、競馬界を包む〝西高東低〟が影響していると考えられるが、「それが美浦組にも波及し始めている」との声が出始めた。
 
 美浦の古参のスポーツ紙記者は、「栗東との比較で、近年は美浦組が善戦している印象があるけど、おかげで若い世代の騎手も元気になってきた。それはいいんだけど、でも美浦で成績を上げているのは、トップレベルの僅かな厩舎に限られるから、恩恵を受けるのも一部の若手だけで、格差は大きくなるばかりなんだよ。この状況は決して好ましいものではない」と警告する。
 増長した若手騎手の〝変化〟は、業界内に広がりやすいもの。これに乗じる形で、有象無象が周囲に群がるのは毎度のことだし、あらぬ噂を立てて足を引っ張ろうとする連中が出てくるのもいつも通り。
 
 そのターゲットになるのでは?と心配されているのが菅原明良騎手と佐々木大輔騎手の二人だ。前者はデビュー6年目の23歳。ブローザホーンで今年の宝塚記念を制し、GI初勝利を挙げた。後者はデビュー3年目で、今年の函館、札幌それぞれの2歳Sを制したばかり。まさに美浦のホープといっていい。
 その二人を気遣うのが先述の記者だ。「坊主頭の髪が伸びて印象が変わってきた、という理由だけで、夜遊び云々が広まりつつある。面白半分にしゃべる連中がいるからね。馬主の耳にも入りかねない。結局は本人達の自覚次第だけどさ」
 そうした原因を作っているのが、当の競馬マスコミなのだから始末が悪い。ファンとしては、彼らの「プロとしての自覚」がどう芽生えていくのかを見守るしかない。



美浦トレセン情報部:吉本