現場の裏話コラム|vol.40|騎手と調教師が挑む再起の秋:勝負の季節が始まる

現場の裏話コラム|vol.40|騎手と調教師が挑む再起の秋:勝負の季節が始まる

先週の新潟2歳Sは6番人気のトータルクラリティがV。新馬戦でも強い競馬を見せながら低評価に甘んじていたが、直線での激しいたたき合いを制して重賞制覇を決めた。騎乗していたのは北村友騎手。2018年には90勝を挙げてリーディング6位に食い込み、次世代のエース格と目されていたのだが、2021年に落馬事故で骨折。1年の休養を余儀なくされ、ピーク時の飛ぶ鳥を落とす勢いがなくなっていた。栗東のマスコミ関係者は語る。「ノーザンファームしがらきの場長とズブズブの関係になり、いいころは有力馬がかなり集まっていました。また、そんな状況の中で名牝といわれるまでにのし上がったクロノジェネシスとのコンビで古馬GI戦線を席巻。それだけにあの落馬事故は痛かったですね。ただようやく往年の勢いを取り戻してきたかな、という感じはします」と語る。

北村友騎手は昨年40勝と復調気配。今年のファルコンSでは3年ぶりの重賞制覇を飾り、新潟2歳Sも制した。「トータルクラリティの父はバゴ。あのクロノジェネシスと同じ父です。これも何かの運命ではないでしょうか。新潟2歳Sもロングスパートをして、最後も差し返すという味のある内容。騎乗ぶりの良さが目立った一戦でもあるだけに、栗東の関係者からは『本来の乗りっぷりが戻ってきた。これならうちの厩舎の馬も任せられる』といった声も聞かれました。この秋は注目のジョッキーといっていいでしょう」と秋競馬でさらなる旋風を予告した。

また、管理する池添調教師に対する声も聞かれたので紹介しよう。某馬主のマネジメントを務めるA氏は「この馬でクラシック戦線を勝てるかが大事になる」と話した。「池添調教師は言わずと知れた池添騎手の弟。体が大きくて騎手を断念しましたが、ノーザンファームやアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎で研修をし、角居調教師の下で修業するなど、エリート街道といえるキャリアの持ち主。2015年に開業したときは期待値が高く、いきなりノーザンファームの良血馬がこぞって所属となりました。ブエナビスタの子を預かるなど、新人とは思えないほどの馬質で、一気にリーディング争いに加わるのではないか、と思っていたのですが。期待ほどの結果が残せず、今はノーザンファームからの評価も下がっています」。2022年のホープフルSをドゥラエレーデ、今年の高松宮記念をマッドクールで制しているが、クラシックとは無縁の日々が続いている。「そろそろ結果を出さないと完全に見限られる。そういう意味でトータルクラリティの活躍はかなり大事になるでしょう」。北村友騎手と池添調教師。二人にとっては勝負のシーズンが始まる。

栗東トレセン情報部:田所