現場の裏話コラム|vol.38|希望から絶望へ:若手騎手が辿った運命の歯車
残念としか言いようがない事故が起きてしまった。若手のホープとして期待されていた角田大河騎手の死亡が8月10日にJRAから発表された。遺族の意向で詳細は明かされていないが、諸々の情報をまとめると、自殺したと考えていいだろう。栗東トレセンの関係者も「そこまでしなくていいのに」という声が多く聞かれた。
事の経緯をまとめると、角田騎手は1日に函館競馬場の芝コースへ自動車で乗り込むという、前代未聞の事件を起こした。2日にはJRAで事情聴取を受けたが、その後は連絡が途絶えてしまったという。同日には元ジョッキーの藤田伸二氏が自身のYouTubeで「角田が死んだという情報が入った」と明かし、関係者内でも「電車に飛び込んで自殺した」と情報が駆け巡った。それから1週間しての発表となったわけだが、関西の某トラックマンによると「早い段階で情報は流れていたが、遺族やJRAが話し合った結果、発表のタイミングをずらした」と語る。
事故が起きた直後は、角田騎手に対してかなり批判的な意見がトレセン内で多かったという。むしろ擁護の声は皆無に近かった。前出のトラックマンは「昨年も携帯電話を使用禁止地区で所持して騎乗停止になっている。反省の色がないと思われても仕方ない、という意見が大半を占めた。もともと父親が有名ジョッキーだったこともあり、競馬村で育ったやんちゃ坊主。常識がないまま育ち、人間をやり直したほうがいいという声も厩舎関係者から聞かれた」と話す。しかしまさか死ぬとは思っていなかっただけに、さんざん批判した厩舎関係者も今週はバツが悪そうな表情をしていたそうだ。
事件の詳細については週刊誌などで報じられているように、「同乗者がいて調子に乗って函館競馬場に乗り入れた」という情報が正しいようだ。相手は女性で飲食店勤務だという話もある。某厩舎関係者は「JRAの事情聴取で免許の取り消しになるだろう、ということを言われたらしい。本人は立ち上がれないくらいショックで、事の大きさをようやく理解したそうだ。やんちゃではあったが、小さいころから競馬を愛していただけに、免許取り消しに愕然としたのだろう。もともと、思い立ったら行動してしまうようなタイプ。よく言えば積極的だが、悪く言えば衝動的でもある。メンタルのコントロールをもう少しできるタイプなら、また違ったのだろうが…」。
この件を受けて、同期の今村聖奈騎手もSNSでコメント。角田騎手と一緒に写っている写真を数点アップした。関係者は「今村騎手のショックは計り知れないだけに、今後の騎乗に影響するだろうとも思ったが…。SNSをアップしたところを見ると、踏ん切りをつけたのだろう。今村騎手のメンタルの強さを感じる。角田騎手の分まで頑張ってほしいところだ」。合掌。
栗東トレセン情報部:田所