現場の裏話コラム|vol.37|新潟開催の暑熱対策:成功と課題
近年の猛暑、暑熱対策として、午後に3時間強の休止時間が設けられた2回新潟開催の2週間。レースの方はひとまず無事に終えることができ、休止時間そのものもファンには概ね好評だったようだ。
開幕週は土日で3万6千人以上の来場者があり、馬券売上も前年比で120%超。2週目も同じような推移で、4日間計で123.5%の5万6千人超。売上も112.2%超で573億円を突破。主催者サイドからすれば、いいことづくめの〝暑熱対策開催〟となった。
実際、発走時刻が繰り上げられた第1レースから、ファンファーレが流れ終わると拍手が湧いたが、それは最終レースまで続いた。休止時間が終わった直後の第6レースでは更に大きな拍手が起き、実質のメインレースとなる第7レースでは拍手とともに大きな歓声があがるほどの盛り上がりをみせた。
「今回は試しでやってみた感じはあったと思うけど、JRAのことだから、これに味をしめて、来年から期間を延ばそう、なんて話になるんじゃないのかな」と言うのはウンザリした表情のベテラン専門紙記者だ。「今はほとんどの記者が関東圏からの通い。金曜日に移動して夜8時過ぎに宿にチェックインしても、翌朝8時には競馬場に着いてなきゃいけない。これじゃ夜の街に出る気にならないし、土曜日に宿に戻れるのも7時過ぎ。日曜日なんて20時台の新幹線に乗れないと帰れないんだよ」と泣きが入っている。しかも厄介なのが休止時間だという。「どこで時間を潰せばいいのやらって感じ」だとか。しかし、そんな状況で期間延長なんてありうるのか。「そもそも北海道組には無関係だし、関西は競馬をやってないから栗東組のスタッフの負担はない。影響があるのは美浦組だけだからねえ」ということらしい。
そう言えば、JRAの若い職員達も、「特に対策は考えていない」と口にしていた。要は「期間限定のことだから」と割り切って、開催場当番(特別手当アリ)の務めとして粛々と対応する、ということだろう。どうやら根も葉もない噂話でもなさそうだ。
ただ、それも含めて、シワ寄せを一カ所に集めればいい、という急場凌ぎの発想もどうかと思う。パドック周回時間を短くしたが、グリーンチャンネルの解説者は「ロクに見れないから」などと予め断りを入れてしゃべっているし、新潟からの移動にスムーズさを欠いた松山騎手が、翌日の札幌競馬に間に合わなかったことを理由に、騎乗停止処分を受けた。本人の過失がどうあれ、主催者サイドにも不備はあったのではないか。もし来年、暑熱対策を延長するというなら、そもそものルールから見直してもいいかもしれない。
ま、とはいえ、不平不満の多くはもっぱらメディアの〝中の人〟から聞こえてくるものばかり。ほとんどのファンは、クーラーの利いた部屋でのテレビ観戦で、そっちのニーズにはしっかり応えている。そうなると売上至上主義のJRAのこと。例によって、聞く耳持たず、になるんだろうな。
美浦トレセン情報部:吉本