現場の裏話コラム|vol.22|クラシック戦線の新たな局面:モレイラ参戦とその影響

現場の裏話コラム|vol.22|クラシック戦線の新たな局面:モレイラ参戦とその影響

4月に入り、今年のクラシック戦線が幕を開けた。どんなヒーロー、ヒロインが誕生するか、例年のことながら興味は尽きない。
 しかし、面白そうだから、といって予想が簡単かと言うとそうでもない。むしろ近年はステップレースが複雑化していて、どの馬が人気を集めるのか、ある程度の目星は付くとしても、本番直前になっても、評価が分かれる傾向にある。
 それは牡馬の方が、牝馬よりも顕著だ。というのは、GIのホープフルSが儲けられたことで、もうひとつのGI朝日杯FSの勝ち馬と並ぶ2歳チャンピオンが、2頭になったことが影響している。しかも今年はホープフルSの勝ち馬レガレイラが牝馬で、皐月賞に駒を進めてきた。この事態はレアかもしれないが、オーナーサイドの考えひとつで、来年以降も似たようなケースがあるかも。そうなると能力比較がより困難になっている。
 
 更に予想をするうえで厄介になっているのが、鞍上の問題だ。前哨戦が終われば、どの馬に誰が騎乗するかは、大体、決まるもの。ところが今年の皐月賞の場合、いつものとは状況が違っている。
 まずスプリングSをシックスペンスで勝ったルメールは、牝馬レガレイラに騎乗する予定だった。ところがそのルメールがドバイ遠征中に落馬負傷。シックスペンス、レガレイラともに鞍上は空席状態になった。
 
 他の人気馬では、朝日杯FS勝ち馬で、共同通信杯2着のジャンタルマンタルと、ホープフルS、ディープ記念と連続2着のシンエンペラーの両方に騎乗していた川田が、本番でどちらに乗るかが注目されたが、前者の方は厩舎所属の坂井瑠に決まったものの、後者は1週前の時点でも正式発表はない。実際は決まっているはずで、本番が数日後に迫る中でも、虚々実々が繰り広げられている。
 それだけに、先週報じられたジョアン・モレイラ騎手の短期免許による参戦が、クラシックの勢力図を大きく変える可能性を持って注目されている。何しろ昨年、約3カ月ほどの騎乗期間にJRAで46勝をマーク。日本競馬への適応力の高さでは、JRAに移籍しているデムーロ、ルメール以上、と思わせる結果を残してきた。その名手が4月6日から6月5日まで、美浦の堀厩舎所属で日本で騎乗するのだから、有力各馬の関係者やエージェント達(特に美浦組)の動きが慌ただしくなるのも無理はない。
 
 すでに発表になっているところで度肝を抜かれたのは、デムーロでディープ記念を勝ったコスモキュランダにモレイラが乗り替わることだ。他方、シックスペンスはダービーへ直行することになり、ルメールの連続騎乗で元の鞘に収まるかと思ったら、ドバイでの落馬負傷が長引くようだと白紙に戻る。モレイラのダービーにしても、あくまで皐月賞の結果次第だとすれば、ダービーまで勢力図は混沌としたまま、という可能性もある。
 
 そうなれば、今は第2グループに甘んじている組も、虎視眈々と先頭グループの隙を狙ってくるだろう。これからの2カ月は、まさに〝モレイラ狂想曲〟になるのかも。



美浦トレセン情報部:吉本