【AJCC】認定競走主幹菅原貴史の追い切り寸評
阿修羅メンバーの皆様。
僭越ながら今週より、私、菅原貴史が重賞追い切り全頭診断の公開を担当させていただきます。
前任の坂井千明と比べてしまえば「役不足」と思われるやもしれませんが、私と致しましても全力でこの担当を全うしたいと考えておりますので、是非とも温かい目で見守っていただけますと幸いです。
1点、坂井千明時代とは変更したい点がございます。
それが「追い切り評価」を、SABCの4段階で評価させていただきます。
ただし、誤解なく申し上げたいのは、この評価は「追い切り」に限るということ。
例えば「追い切りC評価」であったとしても、もしも、それが「イクイノックス」であれば、70点の出来でも勝利してしまうことがあるわけです。実際、イクイノックスの宝塚記念時の追い切りなどは「C評価」でも十分なほどで、追い切り自体は評価できるようなものでは無かった訳ですが、実際は勝利している訳です。
つまりポテンシャルが図抜けている馬は「調子が悪くとも勝ってしまう」ということがあるわけです。また、追い切り自体は「全く良く見せない馬」というのも数多く存在しております。そういった馬に「A評価」が付くことは稀ですが、「いつも通り」という意味では「Bでも評価できる馬」となりますので、あくまで「いくつもある判断ファクターの内の1つ」であることは、お忘れなくご利用いただきたいと存じます。
■1枠1番 マイネルウィルトス【評価B】
宮厩舎[西] 横山武騎手
[1週前] 助手 [1月11日(木)追い]
【栗東坂路】 良 51秒8-37秒8-24秒7-12秒5 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 53秒0-38秒4-24秒5-12秒1 馬なり
坂路で単走。ずっと右を向いている点が気になり「B評価」としたが、フットワークそのものは問題なし。胸前にもいい筋肉がついて、馬体の張りは悪くなく、迫力のある脚さばき。この中間も坂路で加減されることなく調整はすこぶる順調。脚元に爆弾を抱えているからこそ、これは何よりと言えよう。長久明け復帰当初に見せていたフワつく素振りを見せることもなく、前向きな登坂振りも頼もしい限り。馬場悪化で更に長所が生きる状況なら勝ち負けも十分に視野に入る一頭。限りなくA評価に近いBであることは記載しておく。
■2枠2番 クロミナンス【評価A】
尾関厩舎[東] C・ルメール騎手
[1週前] 助手 [1月11日(木)追い]
【美浦南W】 良 82秒4-65秒8-51秒0-36秒4-11秒4 馬なり
[今週] 助手
【美浦南W】 良 65秒6-50秒5-36秒3-11秒4 G前仕掛け
7歳となったが、長期休養を挟んだこともあって年齢的な渋さはなく、馬体、動きとも若々しい。坂路、コースを繰り返し乗られ、1月3日には馬場の大外を回して1F11秒2。1週前は5F65秒8ー3F36秒4ー1F11秒4。併せた相手を手応え、脚勢で圧倒して見せた。今週は単走となったが、手脚が良く伸びた柔らかみがあって、なおかつダイナミックなフットワークを披露。ラストの切れも申し分なく、ゴールを過ぎてからも勢いがあった。5F65秒6ー3F36秒3ー1F11秒4。数字も速く、走るエネルギーが満ちあふれており、仕上がりに抜かりはない。
■3枠3番 モリアーナ【B評価】
武藤厩舎[東] 横山典騎手
[1週前] 助手 [1月11日(木)追い]
【美浦南W】 良 67秒2-51秒9-37秒3-11秒4 馬なり
[今週] 助手
【美浦南W】 良 93秒2-78秒4-64秒7-51秒0-37秒4-12秒0 直強め
手前から出してコース1周を使ったハードなケイコ。7Fから時計になるところを乗られたが、スピードを持続させて、直線も余力を持ったまま勢い十分の伸び脚。7F93秒2ー5F64秒7ー3F37秒4ー1F12秒0。間隔はあいたが、しっかりと攻め込み太めは皆無。前進気勢もあって、うまく仕上がった。ただし、その前進気勢が「テンションの高さ」に繋がる可能性は否定できない面もある。当日の気配は要注意の一頭。
■4枠4番 ショウナンバシット【B評価】
須貝厩舎[西] 横山和騎手
[1週前] 酒井騎手 [1月11日(木)追い]
【栗東CW】 良 84秒9-68秒5-51秒9-36秒8-11秒3 G前一杯
[今週] 助手
【栗東CW】 良 86秒3-69秒3-53秒5-38秒2-11秒6 馬なり
CWコースで併せ馬。直線を向いて、先に前に出たが余裕を持ってパートナーを待つ形。完歩が大きく、四肢のさばきにも軽快さがあった。悪くはない、この馬のいつも通りという感じ。
■5枠5番 ホウオウリアリティ【B評価】
高木厩舎[東] 大野騎手
[1週前] 大野騎手 [1月11日(木)追い]
【美浦南W】 良 83秒6-67秒1-52秒4-37秒5-11秒4 強め
[今週] 助手
【美浦南W】 良 83秒6-67秒2-52秒5-37秒9-11秒6 G前仕掛け
1週前は手応え優勢に1F11秒4。今週は直線で内に入って追い比べ。ゴーサインの反応が速く、グングンと加速して最後は3馬身の先着。6F83秒6ー3F37秒9ー1F11秒6。馬体、気配は大きく変わったところはないが、ケイコの動きはいい。
■5枠6番 サンストックトン【C評価】
鹿戸厩舎[東] R・キングスコート騎手
[1週前] 助手 [1月11日(木)追い]
【美浦南W】 良 84秒7-68秒6-53秒1-38秒6-12秒1 馬なり
[今週] 助手
【美浦南W】 良 87秒0-70秒0-54秒4-39秒1-12秒0 G前仕掛け
長めを織り交ぜて乗り込まれてきたが、走りが単調で数字も目立たず。気性の成長もあるが、中間はやけにおとなしく、覇気はひと息。前走からの良化は薄い。
■6枠7番 アドマイヤハレー【B評価】
宮田厩舎[東] 田辺騎手
[1週前] 助手 [1月3日(水)追い]
【美浦南W】 良 68秒0-52秒6-37秒6-11秒6 馬なり
[今週] 助手
【美浦南W】 良 84秒8-67秒8-52秒7-38秒0-11秒9 馬なり
使った10日後には坂路で3F45秒6ー1F14秒6。ダメージもなく、順調に調整できている。追い切りは中1週となるため美浦ウッドで馬の気に任せたが、弾むようなフットワークから、直線も真っ直ぐ伸びきった。馬体減りもなく前走の出来をガチッとキープ。
■6枠8番 シルブロン【B評価】
稲垣厩舎[東] R・ピーヒュレク騎手
[1週前] R・ピーヒュレク騎手 [1月11日(木)]
【美浦南W】 良 82秒7-67秒3-52秒7-38秒1-12秒2 強め
[今週] 調教師
【美浦坂路】 良 52秒1-38秒2-24秒8-12秒3 一杯
1週前はウッドでピーヒュレクが手綱を取って感触を確かめた。直前は調教師自らが手綱を取って坂路で最終調整。テンから13秒台のラップで入るハードな攻めだったが、ラストもビシッと追って1F12秒3でまとめて見せた。4F52秒1ー1F12秒3。ケイコは地味なタイプだが、この中間はバリバリと動けている。
■7枠9番 カラテ【A評価】
辻野厩舎[西] 菅原明騎手
[1週前] 助手 [1月11日(木)追い]
【栗東CW】 良 72秒4-56秒0-39秒4-11秒7 馬なり
[今週] 助手
【栗東坂路】 良 54秒8-38秒9-24秒8-12秒1 馬なり
坂路で単走。外ラチ沿いをスムーズに登坂。前脚が高く上がり、軽快に四肢が動く。体調の良さを感じさせる。やや首は高いが走る気は十分。最後まで気持ちが切れなかった。
■7枠10番 ラーグルフ【B評価】
宗像厩舎[東] 三浦騎手
[1週前] 三浦騎手 [1月11日(木)追い]
【美浦南W】 良 67秒9-52秒5-37秒9-11秒4 G前仕掛け
[今週] 助手
【美浦南W】 良 84秒5-68秒0-52秒4-38秒1-12秒2 馬なり
シッカリと充電期間を設けただけあって、ほぼほぼ昨年当初の良い頃の状態に戻っていると断言できよう。1週前にビシッと気合を付けたことで、今週は抑えるほどの手応え。最後まで相手に合わせる格好だったが、追えば突き放す勢いがあった。6F84秒5ー3F38秒1ー1F12秒2。いい頃の力強さが出てきており、変わり身が期待できる仕上がりだ。そもそもがモーリス産駒らしい気負いが強い前向きな性格の持ち主。中身さえ動けるレベルに整えてしまえば、嫌でも実戦で動けてしまう。がしかし、この馬のアクションの大きさは「馬場」に大きな影響を受けることも忘れてはならない。
■8枠11番 チャックネイト【A評価】
堀厩舎[東] R・キング騎手
[1週前] R・キング騎手 [1月11日(木)追い]
【美浦南W】 良 80秒4-64秒4-49秒7-35秒5-11秒3 強め
[今週] 助手
【美浦南W】 良 82秒8-66秒5-51秒7-36秒7-11秒6 直強め
かつては喉が鳴るという身体的な課題に、真剣味に欠けるという精神的な課題まで抱えていた同馬。まず間違いなく並みの陣営だったら、このレベルまで育て上げことはできなかったであろう。ここだけの話、水準以上の素質を秘めた馬など結構いるものなのだ。しかし、それらを全てフルパワーで走らせることができているかというと答えはノーとしか言いようがない。それもそのはず、故障を恐がりセーブ気味の調整ばかり、または気難しい馬を操れない…。どことは明言しないが、今時はそんな厩舎ばかりではないか。伸び盛りを逃すことなく、そのタイミングでビシッと攻めてこそ馬は大成する。そして、これを円滑にこなすための準備をかかさない厩舎こそが一流なのだ。そう、この馬をG2のステージで戦わせているという事実こそが堀厩舎が一流である証。喉手術に去勢、そして馬具。ありとあらゆる工夫を駆使して、この癖の強い馬を常識がからせたではないか。その上で堀式のスパルタ調教を解禁して本格化させたのだから、さすがとしか言いようがない。
1週前は6F80秒4ー3F35秒5ー1F11秒3の猛時計。一杯に追われる相手に対して、促す程度で大きく先着。スピード、切れともに抜群だった。今週も併せ馬。前を走る僚馬がコーナー手前で若さを覗かせて頭を上げるようなところがあったが、それに対して全く動じないまま淡々とした走り。直線で内から馬体を並べると、体全体を使った迫力のフットワーク。食らいつく相手を促す程度の手応えで楽に突き放して1馬身の先着を果たした。馬体の緩みは一切なく、ピークと思える仕上がり。道悪も苦にしないだけに週末の悪天候も味方とくれば、まず好勝負は必至か。
■8枠12番 ボッケリーニ【S評価】
池江厩舎[西] 浜中騎手
[1週前] 浜中騎手 [1月11日(木)追い]
【栗東CW】 良 96秒8-80秒0-65秒9-52秒1-37秒6-12秒4 一杯
[今週] 助手
【栗東CW】 良 86秒1-69秒4-53秒8-37秒9-11秒6 直強め
CWコースで単走。首が低く、フォームは安定。手前を替えるタイミングも悪くなかった。首をしっかり上下してスピードアップ。走りには安定感があり、体幹の強さも示した。ラスト11秒6。十分なタイムだろう。その上で、併せ馬の遅れが気になる人に一言。
実戦形式の2週前、本負荷の1週前と共にボロボロと言っても言い過ぎではないぐらいに無惨に遅れてしまっている。とはいえ、この遅れが衰えに繋がるものかと問われるとノーとしか言いようがない。何せ、同馬が調教でボロボロに遅れるのは今に始まったことではないのだから…。簡単な話、昔からどこか調教は調教と達観したようなところのある馬なのだ。これは賢いと言い換えても良いかもしれない。ある一定の強度を超えると自ら止める、これはもう昔から。そして、これを繰り返してきたことで、どこまで調教に付き合えばよいかの加減を同馬は理解済み。だからこそ、今や実戦で抜群の安定感を誇っているのである。直前でキッチリと鋭さを示したように、ここも抜かりなく仕上がっていよう。全く持って侮る必要なし。G2レベルなら常に中心に考えておくべき一頭。